2025/03/27
防災・危機管理ニュース
【ワシントン時事】米トランプ政権高官がイエメンの武装組織フーシ派の攻撃作戦を記者に誤送信した前代未聞の失態は、危機管理上の重大な欠陥を幾重にもさらした。トランプ大統領は、機密に当たらないと主張し幕引きを図るが、野党民主党は盤石な政権を突き崩す好機とみて、攻勢を強めている。
◇法令違反の可能性
「トランプ政権が誤って私に戦争計画をテキスト送信した」―。24日、アトランティック誌のゴールドバーグ編集長の記事が配信されると、ワシントンに衝撃が走った。
ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)はこれより先、通信アプリで安保関連の高官のグループチャットを設定。ウォルツ氏から招待されたゴールドバーグ氏が加わっていた。招待の理由は不明だが、ウォルツ氏が他の政権高官と勘違いした可能性が指摘されている。
通信の安全が確保されない手段で機密情報をやりとりすれば、スパイ防止法などの法律に触れる恐れがある。グループにはバンス副大統領やルビオ国務長官ら最高レベルの高官が参加していたが、アプリの使用に疑念を挟む者はいなかった。
ゴールドバーグ氏は、ヘグセス国防長官が「標的や使用する兵器、攻撃の手順など作戦の詳細を投稿した」と証言。敵対勢力に漏れ伝われば、中東地域で任務に当たる米軍や情報機関を危険にさらす可能性がある極めて機密性の高い内容だとして、当初は非公開としていた。
トランプ氏は25日、作戦が成功を収めたため問題はなかったとの認識を示した。その上で「安全性よりスピードが必要な状況では(アプリを)使用せざるを得ないかもしれない」と話し、辞任を求める声も上がっているウォルツ氏を弁護。さらに「多くの話をでっち上げてきた」と根拠を示さずゴールドバーグ氏に批判の矛先を向けた。
◇反転攻勢
「恥さらしだ」「機密でないなら委員会と共有しろ!」。25日の上院情報特別委員会では、民主党議員の怒声が飛んだ。
出席したギャバード国家情報長官やラトクリフ中央情報局(CIA)長官は、アプリで軍事作戦について話し合ったのか、私用携帯を使っていたのかといった質問に「調査中だ」「記憶にない」と曖昧な答弁を重ねた。
明白な失態は、政権との効果的な対決戦略を打ち出せずにいた民主党に絶好の攻勢の機会を与えた。同党のクリントン元国務長官が私用メールを公務に使っていた問題で共和党の厳しい批判を浴びた経緯もあり、徹底的に追及する構えだ。
米メディアも終日この問題を大々的に報じている。表向きウォルツ氏や安保チームをかばったトランプ氏だが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、周囲にいら立ちを見せているとも伝えた。事態は容易に沈静化しそうもなく、発足2カ月余りの政権は当面、防戦を強いられることになる。
〔写真説明〕ウォルツ米大統領補佐官(国家安全保障担当)=25日、ホワイトハウス(AFP時事)
〔写真説明〕25日、ワシントンで開かれた米上院情報特別委員会に出席するギャバード国家情報長官(左)とラトクリフ中央情報局(CIA)長官(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)


- keyword
- 米国
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/18
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17
-
-
-
-
-
社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置リスクオーナー制の導入で責任を明確化
阪急阪神ホールディングス(大阪府大阪市、嶋田泰夫代表取締役社長)は2024年4月1日、リスクマネジメント推進室を設置した。関西を中心に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開する同社のグループ企業は100社以上。コーポレートガバナンス強化の流れを受け、責任を持ってステークホルダーに応えるため、グループ横断的なリスクマネジメントを目指している。
2025/11/13
-
リスクマネジメント体制の再構築で企業価値向上経営戦略との一体化を図る
企業を取り巻くリスクが多様化する中、企業価値を守るだけではなく、高められるリスクマネジメントが求められている。ニッスイ(東京都港区、田中輝代表取締役社長執行役員)は従来の枠組みを刷新し、リスクマネジメントと経営戦略を一体化。リスクを成長の機会としてもとらえ、社会や環境の変化に備えている。
2025/11/12





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方