【台北時事】台湾南部・屏東県で17日、最後まで稼働していた第3原発2号機が運転期限を迎え、発電を停止した。民進党の蔡英文前政権が進めた「脱原発」政策が実現した形だが、直前になり再稼働を可能とする法改正が行われたほか、頼清徳政権は次世代型原発の導入に前向き。今後長期にわたって「原発ゼロ」が定着するかどうかは不透明だ。
 台湾では1978年以降、第1~3原発の原子炉各2基が順次稼働。2011年の東京電力福島第1原発事故後に原発廃止を求める世論が高まり、前政権以降は40年の運転期限に達した原子炉を段階的に停止してきた。
 台湾では半導体生産などで電力需要が高まっているが、経済部(経産省)によると、全電源に占める原発の比率は直近で約3%まで減少。頼総統は、液化天然ガス(LNG)火力発電や再生可能エネルギーが増え、原発停止後も32年まで電力を十分賄えると説明する。ただ、台湾のLNG備蓄量は1~2週間程度とされ、中国軍による海上封鎖時の脆弱(ぜいじゃく)性が課題だ。
 立法院(国会)では今月13日、いったん停止した原発の最長20年の再稼働に道を開く関連法改正が実現した。昨年の立法委員(国会議員)選で民進党は少数与党となっており、「電力安定供給に原発が必要」と主張する最大野党・国民党が法改正を主導した。
 頼総統は、安全性の確保や社会的合意が必要だとして既存原発の再稼働に消極的だが、従来型より出力を抑えた「小型モジュール炉(SMR)」などの次世代原発に「オープンな態度」を表明し、完全な脱原発とは距離を置く。卓栄泰行政院長(首相)は16日の記者会見で「新たな核エネルギー技術の発展に期待する」と踏み込んだ。
 台湾が安全保障や経済・貿易関係などで頼みとする米国が次世代原発の研究開発を進めており、歩調を合わせる狙いもあるとみられる。公営事業者の台湾電力も、次世代原発対応のため原子力部門の技術陣を温存する方針を示している。 
〔写真説明〕台湾南部・屏東県の海沿いにある第3原発=4月29日(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)