随意契約による備蓄米の放出が29日始まった。生活用品大手アイリスオーヤマ(仙台市)のグループ会社の亘理精米工場(宮城県亘理町)に同日午前、12トンがトラックで運び込まれた。申請受け付け初日の26日に同社が1万トンの売り渡しを申し込んでから、わずか3日。競争入札を通じたこれまでの放出に比べ、格段に早く小売業者の手元に届いた。農林水産省は29日、大手小売業者61社による計約22万トンの申し込みが確定したと発表した。
 アイリスの精米工場では、田中伸生管理本部長らが備蓄米の到着を待ち受けた。田中氏は「最初に店頭に並べたいという気持ちで取り組んできて、きょうにこぎ着けた。1回目は限られた量だが、第2弾、第3弾と入荷次第早く店頭に並べたい」と話した。
 備蓄米の品質検査を経て、精米と袋詰めに着手。パッケージには「政府備蓄米」のシールが貼られた。29日午後1時に開始した自社の通販サイトの予約販売は、45分程度で受け付け終了となった。店頭では6月2日に5キロ当たり2160円で販売を始める予定だ。
 楽天グループは今月29日、随意契約で購入した備蓄米を、直営サイトなどを通じて5キロ2138円で販売を開始。一部のサイトでは開始直後に売り切れとなった。LINEヤフーも同社が運営する「ヤフーショッピング」内の特設サイトで販売を開始したが、すぐに完売した。価格は5キロ1998円。
 政府が3~4月に入札を実施した備蓄米は集荷業者や卸売業者を経由するため、店頭に並ぶまで時間がかかっている。3月に落札された備蓄米21万2132トンのうち、4月下旬時点でスーパーなど小売店に届いたのは約7%にとどまっていた。
 備蓄米の購入を契約した大手小売業者の一部も6月初旬の販売を目指しており、コメの「官製値下げ」に向けた作業が急ピッチで進んでいる。ただ、自前の精米設備を持っていない小売業者は、卸売業者などに委託せざるを得ない。ある小売り大手は「調整に時間がかかる」と明かした。
 一方、随意契約を結べなかった企業も出た。農水省が公表した申し込み確定の事業者リストに、ファミリーマート、セブン―イレブン・ジャパン、ローソンのコンビニ大手3社の名前はなかった。 
〔写真説明〕アイリスオーヤマのグループ会社の精米工場で袋詰めされた備蓄米には、「政府備蓄米」と書かれたシールが貼られた=29日午後、宮城県亘理町
〔写真説明〕アイリスオーヤマのグループ会社の精米工場で袋詰めされた備蓄米=29日午後、宮城県亘理町
〔写真説明〕アイリスオーヤマのグループ会社の精米工場に到着した検査前の備蓄米を手にする担当者=29日、宮城県亘理町
〔写真説明〕アイリスオーヤマのグループ会社の精米工場に運び込まれた備蓄米=29日、宮城県亘理町

(ニュース提供元:時事通信社)