2025/05/31
防災・危機管理ニュース
【シンガポール時事】中国の習近平政権は、30日からシンガポールで開催されている「アジア安全保障会議」(通称シャングリラ会合)への国防相派遣を見送った。中国は台湾海峡や南シナ海で覇権主義的行動を続け、近年は米欧主導の国際会議や機関から距離を置く動きが目立つ。新興・途上国を巻き込み、習政権のプロパガンダを展開できる「中国製」の国際舞台を構築することに軸足を移している。
「会議出席者の多くは米国のアジアや北大西洋条約機構(NATO)における盟友だ。『中国脅威論』を宣伝する舞台だ」
昨年の安保会議後、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、会議主催者の英シンクタンクが中立性を欠いていると批判する記事を展開。北京の外交筋は、習政権の強硬な海上行動への批判が集中する同会議は「中国にとって居心地の良いものではない」と指摘する。
中国は2006年から北京で開催している安全保障に関する国際会議「香山フォーラム」を、アジア安保会議と同等の発信力を持つ催しにしようとしている。昨年の同フォーラムには、100以上の国・国際機関の防衛担当者らが参加。ただ、外国メディアは一部を除いて取材が許可されず、中国とロシアや新興国との軍事連携を誇示する場という性格が濃厚だ。
アジア安保会議初日の30日、中国主導の「国際調停院」設置に関する署名式が香港で行われ、アフリカなどの32カ国が署名した。調停院は国家間紛争の話し合いによる解決をうたっているが、恣意(しい)的な運用を懸念する声もある。
香港政府トップの李家超行政長官は「オランダ・ハーグの仲裁裁判所と同等になる」とアピール。仲裁裁判所は16年、南シナ海を巡る中国の領有権主張を退ける判決を下した。習政権は判決を「紙くず」と呼び無視しているが、この一件により、自らコントロールできる国際機関の必要性を痛感したとみられる。
習国家主席は23年、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を初めて欠席した。中国と議長国インドとの関係悪化が一因ともされたが、最近の中国外交は、自身が大きな発言力を持つ上海協力機構(SCO)や新興・途上国グループ「BRICS」関連の会合を優先順位の上位にしつつあるようだ。
〔写真説明〕中国の習近平国家主席=9日、モスクワ(AFP時事)
〔写真説明〕31日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議
(ニュース提供元:時事通信社)


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