中国海軍の空母2隻が同時に日本の太平洋側で活動したことが初めて公表された。空母艦載機による海上自衛隊機への異常接近とともに、空母が沖ノ鳥島(東京都)や南鳥島(同)の日本の排他的経済水域(EEZ)内を航行したことも含めて、防衛省はその意図を分析している。

 空母「遼寧」は7日、台湾有事に米領グアムなどから来援する米空母や潜水艦を寄せ付けない中国の防衛ラインとされる「第2列島線」(小笠原諸島―グアムなど)を初めて越え、南鳥島のEEZ内を航行。防衛省関係者によると、台湾有事を想定し、遼寧と「山東」がそれぞれ第2列島線を境に「米空母役」と、迎え撃つ役に分かれて演習をした可能性がある。

中国軍機の異常接近は、空母艦隊が設定した防空圏に海自機が近づくのを嫌ったとの見方もある。

 山東は9日に沖ノ鳥島のEEZ内を航行し、艦載機の発着艦も確認された。沖ノ鳥島のEEZを巡っては5月下旬に中国の海洋調査船が日本側の同意を得ずに活動。日本政府は中国に抗議したが、中国政府は沖ノ鳥島について「島ではなく岩礁だ」として、日本のEEZを認めない従来の立場を主張。

 与党関係者は「海洋調査船とEEZ内の中国軍の行動に関連性があるかどうかを含め分析する必要がある」と指摘する。

 遼寧が航行した南鳥島海域は豊富な海底資源が有望視されている。国連海洋法条約に基づき深海底の鉱物資源を管理する国際海底機構(ISA)などによると、中国はISAから付与された探査権に基づき、南鳥島の日本のEEZ外側の公海で、レアメタル(希少金属)を含有する「マンガン団塊(だんかい)」を海底から試験採鉱する計画を進めている。

 中谷元防衛相は13日の記者会見で、空母が中国の近海防衛ラインとされる第1列島線(九州・沖縄―フィリピン)をはるかに越え、EEZ内を含む太平洋側で活動を本格化させたことについて「警戒監視に万全を期し、力による一方的な現状変更の試みを抑止する」と強調。今回の中国空母の動向について「詳細にわたって分析を進める」と述べた。 (了)

画像を拡大 第1・第2列島線

(ニュース提供元:時事通信社)