2024年元日に発生した令和6年能登半島地震への対応を検証した石川県の報告書が、8月1日に公表された。報告書では、避難者情報の把握や物資管理など複数の分野で、デジタル技術の活用が不十分であったことを指摘した。紙ベースでの業務運用が多く、情報共有や対応の迅速化に課題が生じた。県は今後、業務の効率化や支援体制の強化に向けて、デジタル化の推進を図る方針である。

報告書は、災害対応の各段階でデジタル技術の導入が限定的であった実態を指摘。避難所における避難者名簿の作成・共有は主に紙で行われ、入力作業の負担が大きく、情報のリアルタイムな把握や関係機関との共有に時間を要した。システムの統一やフォーマットの標準化も進んでおらず、支援の重複や漏れの要因となった。特に、2次避難(ホテルや旅館等への移動)において、避難者の所在を正確に把握できない事例が相次ぎ、受入先の調整や生活支援に混乱が生じた。報告書では、マイナンバーや既存のシステムを活用した情報の一元化が今後の課題として挙げられている 。

支援体制の調整も不十分

このほか、人的支援の受け入れにあたっては、応援職員やボランティアの調整体制が整備されておらず、支援が被災市町に届くまでに時間を要した。報告書では、平時からの関係団体とのネットワーク構築や、受援調整チームの常設化などを提案。人員・物資・情報といった「資源の受け入れ」に関するマニュアル整備も必要だとした。

避難所の運営や生活支援においても、県が主体的に支援に入るまでに時間を要し、初期対応では市町に大きな負荷がかかった。医療・福祉支援についても専門職の不足が課題となった。

災害時の情報発信においては、SNSやホームページ等を活用したが、通信環境が不安定な地域や高齢者を中心に、情報が行き届かないケースが目立った。報告書は、テレビ・ラジオ・防災無線・ポスターなどアナログ手段との併用、避難所や支援施設を通じた情報伝達など、対象に応じた多様な手段の確保を求めている 。

また、災害発生当初の情報の錯綜も指摘されており、県の公式発信の迅速性と正確性を高める必要性が挙げられた。

報告書では、「公助」が届くまでには時間がかかることを踏まえ、県民自身による「自助」や地域での「共助」の重要性が繰り返し強調された。家具の固定、家庭内備蓄、安否確認手段の確保など、個人の備えに加え、防災訓練や地域防災リーダーの育成による住民力の向上が必要だとしている。