昨年の能登半島地震と豪雨で甚大な被害を受けた石川県奥能登地域の4市町で、30代以下の人口減少が40代以上と比べ2倍超のペースで進んでいることが分かった。豪雨災害から21日で1年。人口流出に歯止めがかからず、地域の復興に暗い影を落としている。
 奥能登地域を構成する輪島市、珠洲市、能登町、穴水町の各市町の住民基本台帳人口の推移を調べたところ、地震発生時の2024年元日には計5万8225人だったが今月は計5万1344人で、1年8カ月で11.8%減少した。30代以下の減少率は20.1%で、40代以上の9.5%と比べ2倍超だった。
 減少率は若い年代ほど大きく、年代別では30代で17.5%、20代で19.0%、10代で21.9%、9歳以下は22.6%だった。一方、高齢層は小さく、70代以上で6.8%だった。
 復興を支援する一般社団法人「能登官民連携復興センター」の藤沢烈センター長(49)は地域の担い手となる若者の流出について、仕事の少なさや教育環境の不十分さを指摘。県内の都市部などに移住せざるを得なくなっていると分析する。
 輪島市南志見地区は地震と豪雨で、11ある集落の約半数が壊滅的被害を受けた。過疎化が進み、解体家屋の跡地に草が生え、イノシシに畑や墓を荒らされた集落もある。同地区の約340世帯は2度の被災後、約190世帯にまで減少。今や、多くが仮設住宅の高齢者だ。区長会長で、地域情報の発信などを通じて復興に取り組む古酒谷政幸さん(77)は「ここに住んでいていいのかと若者が思うのは当然。仕事がないさかい」と語る。
 一方、地域に活気を戻そうとする動きもある。食品加工事業やカフェ経営を通じて、障害者雇用の拡大を目指す企業「奥能登元気プロジェクト」の奥田和也社長(54)もその一人だ。豪雨の4日後にはカフェの営業を再開し、雇用を守った。今年3月にはイベントスペースを開設し、地域住民の憩いの場とした。
 人が減っていく地域で商売をすることは、冷静に考えたらあり得ない―。そんな思いもあるが、かつて祖父母が暮らし、自身も2年前に移住した能登への愛着は変わらない。「雇用を生み、成功事例をつくりたい」と意気込む。 
〔写真説明〕取材に応じる石川県輪島市南志見地区の古酒谷政幸区長会長=7日、同市
〔写真説明〕自ら撮影した写真を前に昨年9月の豪雨について話す奥田和也さん=4日、石川県輪島市
〔写真説明〕豪雨翌日、河川の氾濫で被害を受けた石川県輪島市南志見地区=2024年9月、同市(古酒谷政幸さん提供)

(ニュース提供元:時事通信社)