【ワシントン時事】トランプ米政権が、保守活動家の銃殺事件を機に左派やメディアへの圧力強化を鮮明にしている。反ファシズムを標ぼうする「アンティファ」を国内テロ組織に指定。政治的主張に基づく国民分断がさらに深刻化しかねないとの懸念が広がっている。
 「政治的暴力を拡散、扇動し、合法的な言論を抑圧する」。22日に署名された大統領令は、アンティファの活動をこう非難した。
 トランプ大統領は自身の熱狂的支持層「MAGA(マガ)」の代表格であるチャーリー・カーク氏が10日の講演中に殺害された事件を受け、急進左派による活動を制限する考えを表明していた。21日には西部アリゾナ州で行われたカーク氏の追悼式典に出席し、「暴力の大半は左派によるものだ」などと主張した。
 バンス副大統領ら高官も左派勢力への圧力を強める意向。米メディアによると、カーク氏の事件を称賛したり、容認したりするような発言やSNS投稿を理由に、国防総省などの職員らが停職や解雇の処分を受けるケースが相次いでいる。
 矛先はメディアにも向いている。トランプ氏は自身に否定的な報道をするテレビ局の放送免許取り消しに言及。政権は日本を含む外国報道関係者のビザの有効期間短縮にも乗り出している。
 こうした動きに対し、米メディアからは強硬姿勢を警戒する声が上がる。ワシントン・ポスト紙は今回の大統領令が憲法に抵触する可能性があると指摘。専門家の話として、左派全般への弾圧を正当化するために用いられる恐れがあると強調した。 
〔写真説明〕「アンティファはテロだ」として批判するプラカード=2019年8月、米オレゴン州ポートランド(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)