2015/05/11
防災・危機管理ニュース
東京商工リサーチが「東日本大震災」関連倒産の調査結果を発表。4月の倒産件数は7件。地区別には、関東5件、北海道と東北(秋田)が各1件だった。3月には事業停止中の企業整理決定の増加などで2年11カ月ぶりに前年同月を上回っていた(28件)が、4月は速報値ながら4カ月ぶりに10件を下回り、震災関連倒産は再び収束傾向を強めた。震災からの累計は、4年を経過して1605件となった。
「震災関連」倒産の累計1605件を都道府県別にみると、東京が最多で483件(4月3件)。次いで宮城123件、北海道82件、神奈川68件、福岡66件、千葉62件、岩手57件、茨城55件、群馬53件、栃木と静岡が各46件、大阪44件、福島43件、埼玉41件、山形40件の順。直接被災地の東北6県の倒産件数は311件(構成比19.3%)となっている。
一方、倒産の累計を産業別にみると、最多は宿泊業・飲食店などを含むサービス業他の422件(4月2件)。次いで、製造業が371件(同1件)、卸売業が292件(同1件)、建設業が198件(同1件)、小売業が149件(同1件)の順となっている。
「震災関連」の経営破綻は、原則として次の3つのどれかに該当するものを集計している。
1. 直接型・・・・震災により施設・設備・機械等に被害を受けて経営破綻
2. 間接型・・・・以前から経営不振だったが、震災による間接影響を契機に経営破綻
3. 直接・間接型・・・・震災の影響による経営破綻が取引先や弁護士などへの取材で確認できたもの
経営破綻を被害型で分類すると、「間接型」が1475件(構成比91.9%)、「直接型」は130件(同8.1%)。4月は「直接型」は発生なしだった。
倒産事例としては、東京都と千葉県の事例を挙げている。
架空・地中配電線工事を主力とする勝鹿建設(東京都)は、ピーク時に完工高22億6,076円をあげていた。しかし、東日本大震災時の原発事故で東京電力関連の仕事が激減。2014年1月期の完工高は5億2618万円まで落ち込んだ。このため、受注減少に関する補償問題を裁判所で解決を図るよう進めてきたが、結審の目途が立たず、業績改善の見込みもないため破産を申請した。
有機農産物卸のナチュラルシードネットワーク(千葉県)は、有機農産物に限定して全国の生産者のネットワークを広げ、商社との業務提携にで販路を拡大。ピーク時に年商2億5080万円をあげていた。しかし、福島第一原発事故による風評被害で2012年3月期の年商が1億5954万円まで落ち込み赤字を計上。その後も、安価な外国産農産物との競合から経営改善を図れず破産を申請した。
東京商工リサーチでは、震災関連倒産は発生ペースが鈍化しているものの、いまだ震災の影響を払拭できない企業が多く、影響の大きさがうかがえるとしている。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
緊急事態宣言下の社会江戸庶民の危機対応に学ぶ
国内で新型コロナの感染が確認されてから約1年。度重なる緊急事態宣言の発出と延長もあり、影響が長期化しています。しかし、日本社会が感染症の危機に直面したのは今回が初めてではありません。近代以前の社会は感染症の危機にどう対応してきたのか。日本近世史、医療社会史を専門とする奈良女子大学の鈴木則子教授に聞きました。
2021/02/26
-
災害時のトップの役割は何ですか?
リスク対策.comが行った地震シミュレーションアンケートの結果から、災害対策のポイントを学ぶシリーズ3回目は代替要員です。このシリーズが終わる頃には、きっと自分たちの防災やBCPのレベルが向上しているはずです!
2021/02/23
-
資金繰り支援頼みでギリギリ経営を維持負債増えるも売上なし 春先の息切れ懸念
新型コロナ関連の経営破たん件数は、昨年9月以降1カ月90~100件超の高い水準で推移。2月も最多の発生ペースを更新している。緊急事態宣言解除が見送られ、外出自粛や時短要請が引き続き売上を圧迫。年度末を控え、息切れ企業の増加で倒産はさらにピッチを上げる可能性が高い。リレーインタビュー第4弾は中小企業の経営環境について。
2021/02/22