2015/06/18
防災・危機管理ニュース
BCPの策定進むも、BCMに関する社内教育・訓練に課題
MS&ADインシュアランスグループの株式会社インターリスク総研と、株式会社時事通信社は、中国に進出している日系企業5000社を対象に、事業継続マネジメント(Business Continuity Management:BCM)の実態調査を共同で実施し、今般、回答状況をまとめた。両社は2012年にも同様の調査を実施しており、今回が2回目の調査となる。
今回の調査では、前回と比べて、中国の現地法人等における事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)の策定が着実に進んでいることが分かった。一方で、BCMに関する社内教育や訓練の実施状況等については目立った進展が見られず、今後に向けた課題も明らかになった。
1.調査の概要
調査方法:国際郵便・中国国内郵便によるアンケート郵送法
調査対象企業:北京(華北地域)、上海(華東地域)、広州(華南地域) に進出している日系企業5000社
回答数:400社(回答率:8.0%)
調査期間:2014年12月~2015年2月
2.調査結果
(1)事業継続計画(BCP)の策定状況について
前回調査と比較して、全体的にBCPの策定が進んでいることが分かる(図1)。
また、BCP策定の契機となった要因としては、「日本本社からの要請・指示」が増えているのが目立っている(図2)。前回調査以降、中国を含め、海外での事業中断を懸念させるような災害や事件が度々発生したため、日本本社において、海外現地法人等の事業継続に対する問題意識が高まった可能性がある。
図1問「貴社ではBCPを策定していますか?」に対する回答状況

図2問「BCP策定に取組む契機になった要因は何ですか?」に対する回答状況(複数回答)

(2)従業員に対する教育訓練
BCPの策定は前回調査に比べて進んできたものの、BCMに関する訓練(図3)や社内教育(図4)の実施状況については、いずれも前回調査とほぼ同水準であり、実施していないという回答が8割程度にのぼる。事故や災害等に対する組織としての対応能力を維持向上するために、今後は中国現地法人等においてもBCMに関する教育訓練が進むのが望ましいといえる。
図3問「BCPに関する訓練を定期的に行っていますか?」に対する回答状況

図4問「BCMに関する社内教育(研修・セミナーなど)は行われていますか?」に対する回答状況(複数回答)

3.今後の課題について
中国現地法人等におけるBCPの策定は前回調査に比べて進んだものの、継続的にBCMに取り組む体制の整備はあまり進んでいないようだ。例えば、BCMの担当部署を(専任・兼任を問わず)設置しているという回答は14.6%、またBCMへの取り組状況を役員会に報告しているという回答も17.3%にとどまっている。前述の教育訓練を実施していくためにも、このような体制整備が必要となるだろう。
しかしながらこの点は、日本企業を対象とした過去の調査からも、あまり取り組みが進んでいない部分であることが分かっている。したがって、まずは日本本社でBCMの運用体制を整備し、運用の経験やノウハウがある程度蓄積されてから、それを中国現地法人に適用していくのが現実的なアプローチと言える。その際に言語や習慣、文化の違いを考慮し、現地向けにアレンジする必要があるのは言うまでもない。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
1000人に聞いた防災の取り組みと行政への期待
リスク対策.comは、地域住民がどの程度防災に取り組んでいるのか、また防災の観点から行政に対してどのような要望を持っているのかなどを把握する目的でインターネットによるアンケート調査を実施した。その結果、2021年5月から避難勧告が廃止され避難指示に一本化されたことについては約5割しか理解していないことや、平時から国や地方自治体の防災のホームページなどがあまり活用されていない実態が明らかになった。調査は、2022年11月21日から22日にかけてインターネット上で行い、全国の20歳以上の成人男女1000人からの回答を得た。質問は、回答の質を高めるため「この質問は一番右の回答をお選びください」という条件項目を入れ、適切な回答をしなかったものを除き、計889人を有効回答として分析した。
2023/01/30
-
社内滞在時をイメージさせる実践的な訓練と備蓄
テクニカルセラミックスを開発・生産するクアーズテックは2012年、東京都の帰宅困難者対策条例を機に一斉帰宅抑制対策に乗り出しました。独自のプログラムを追加した実効性の高い訓練や被災時の心理にも配慮したきめ細かな備蓄が評価され、2021年には東京都のモデル企業に。同社の取り組みを紹介します。
2023/01/29
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2023/01/24
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月24日配信アーカイブ】
【1月24日配信で取り上げた話題】最強寒波への備え
2023/01/24
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月17日配信アーカイブ】
【1月17日配信で取り上げた話題】防災心理を学ぶゼミ生が制作した企業の防災マニュアル/コロナ発生から3年 企業の初動対応を振り返る
2023/01/24
-
BCPと助け合える関係が機能した災害復旧活動
2019年の台風19号でグループ含め3工場が壊滅的被害を受けたカイシン工業は、経営トップが「全力復旧」の方針を発表すると各工場が即座に活動を開始。取引先や協力会社の支援を受けて設備の交換を迷いなく進めるとともに、代替生産によって早期に出荷を再開しました。同社のBCPと助け合える関係づくりを紹介します。
2023/01/19
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月10日配信アーカイブ】
【1月10日配信で取り上げた話題】2023年のリスクを読む
2023/01/17
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方