【ニューデリー時事】パキスタンとアフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権の和平協議が再び決裂した。停戦合意は維持されているものの、パキスタンに越境テロを繰り返すイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」を取り締まる責任をタリバンが認めず、溝が浮き彫りとなっている。
 「TTPの台頭はイスラム首長国(タリバンが主張する国名)の統治より前で、何の関係もない。パキスタン国内の問題だ」。トルコで6、7両日開かれたパキスタンとの3回目の協議が成果なく終わった後、タリバン暫定政権のムジャヒド報道官はそう突き放した。
 これに対しパキスタン外務省は9日の声明で、タリバンが2021年8月にアフガンの実権を握って以降、同国からのテロが急増したと指摘。タリバンは「この現実を否定することも自らの責任を免れることもできない」と非難した。
 TTPはパキスタン政府打倒を掲げ、同国内でタリバンを支持する複数の勢力が集まって07年に結成された。国境地帯のアフガン側に潜伏し、タリバンと友好関係にあるとされる。
 パキスタンとタリバンの攻撃の応酬は、パキスタンがTTP指導者を標的にアフガン首都カブールなどを10月に空爆したことがきっかけとなり、激化している。パキスタンはタリバンに対し、TTPや他のテロ組織の拠点としてアフガン国土を使わせないよう求めていた。しかし、一向に改善されず、業を煮やし直接攻撃に踏み切った。
 10月の協議も、TTP対策がネックとなり交渉は一時決裂した。次回協議の見通しは立っておらず、衝突が再燃する恐れもある。
 パキスタンのシンクタンク「安全保障研究センター」(CRSS)によると、今年1~9月に同国内で発生したテロや対テロ作戦に関連した死者は2414人(テロ実行犯を含む)で、2546人だった昨年1年間の死者数に肉薄。この10年で最多となる可能性がある。 
〔写真説明〕空爆で破壊された車の前に立つアフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの戦闘員=10月16日、南部スピンボルダック(ロイター時事)

(ニュース提供元:時事通信社)