クマ被害の深刻化はデータにも表れている。環境省によると、2025年度上半期(4~9月)のツキノワグマの出没件数は、統計のある09年度以降最多の2万792件で、初めて2万件を突破。7月以降は市街地や住宅周辺、道路といった人の生活圏での人身被害が全体の7割以上に達しており、同省は警戒を呼び掛けている。
 同省によると、九州7県と沖縄には生息していない。北海道にはヒグマが出没するが件数は非公表。25年度上半期は岩手での出没が4499件と最も多く、秋田(4005件)、青森(1835件)などが続いた。東北6県だけで全体の6割超を占めた。東北地方では特に餌となるブナの実が凶作で、餌を探しに人里に下りてくるクマの出没が増えているとみられる。
 出没の増加に伴い、人身被害も多発。今月14日正午時点の犠牲者は13人で、これまでの最多だった23年度の6人を大幅に上回っている。
 今年9月には市町村の判断で発砲を可能とする「緊急銃猟」制度が始まった。今月13日までに実際に発砲に踏み切ったのは23件。同省は交付金の額とメニューを拡充し、緊急銃猟の運用やクマが好む農作物の管理について助言する専門家の派遣など、自治体への支援を強化する。
 同省担当者は「人に慣れている個体が増えた。食べ物に執着するクマは同じ場所に何度も出没することがある」と注意喚起している。 
〔写真説明〕岩手県花巻市にある笹間保育園のドアの外に現れたクマ=10月14日、サトウ・ジュンコさん提供(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)