「気候変動は最大の詐欺だ」―。トランプ米大統領の発言に代表される気候変動についての懐疑論が世界中で広まっている。科学者らでつくる国際パネル「IPIE」が気候変動やエネルギー分野の誤・偽情報に関する論文を分析した報告書では「情報の正確性の欠如は気候危機を深刻化させている」と指摘した。報告書の執筆に携わった東北大の明日香寿川特任教授はインタビューで、情報を活用する能力(リテラシー)を向上させる必要性を訴えた。主なやりとりは次の通り。
 ―気候変動に関する懐疑論の現状は。
 誤情報、偽情報は気候変動に限らずいろんな部門で増えており、SNSの影響が強くなっている。わざとそういう情報を出して商売に使っている状況もある。米国ではトランプ政権になって勢いがあり、そうした流れはなかなか変わらない。一方で、重要な事実として、経済合理性の観点から、思考や懐疑論に関係なく再生可能エネルギーはどんどん導入され、それが結果的に温暖化対策につながっている。
 ―広まる情報の特徴は。
 温暖化対策は化石燃料を減らすことなので、経済的な利益を失う企業や国、専門家たちが懐疑論を流してきた。中身という意味では、温暖化が人為的な要因によるものとする科学自体を否定するのではなく、「再エネは高い」というような、対策を遅らせる「戦略的懐疑」の方向に動いているのは確かだ。
 ―必要な対策は。
 個人のリテラシーを高める必要がある。日本は温暖化対策を頑張っているというイメージができつつあるが、本当はそこから疑わないといけない。やはり関心が薄いのが現状だ。 
〔写真説明〕インタビューに応じる明日香寿川東北大特任教授=10月29日、東京都内

(ニュース提供元:時事通信社)