2026/06/21
防災・危機管理ニュース
米国とイランが戦闘終結の覚書に合意したことで、中東情勢を巡る地政学リスクはひとまず後退した。ただ、高値で代替調達した原油やナフサの物価への波及は当面続き、物流網の正常化にも時間がかかる見通しで、日本経済にはなお爪痕が残る。合意後も交渉次第で再び状況が逆戻りする可能性もあり、不透明感は払拭されていない。
中東情勢の影響が本格化する前の2026年1~3月期の実質GDP(国内総生産)は、年率換算で前年比1.8%増とプラス成長を維持した。しかし、ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、原油の価格急騰や調達不安から企業の景況感や消費者心理が急速に悪化。5月の景気ウオッチャー調査では、2~3カ月先の景況感の見通しを示す先行き判断指数が40.7と、好不況の分岐点である50を大きく下回った。
一方、企業物価指数は5月に前年同月比6.3%と大きく上昇。石油・石炭製品や化学製品などに値上げの動きが広がった。同月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は同1.4%の上昇にとどまったが、第一ライフ資産運用経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「企業は原油コストをまだ十分に価格転嫁できておらず、流通の末端に行くほど、しばらく値上げが継続する」と指摘する。
物流正常化への道のりも平たんではない。熊野氏は、ホルムズ海峡の安全確保や機雷除去には一定の時間を要し、タンカーが日本を出発して原油を持ち帰るまでには往復で6週間程度かかるとみる。イランの石油関連施設の復旧も必要で、経済環境は即座に戦闘前の状況には戻らない。5月の貿易収支は3786億円の赤字に転落。米イランの合意で原油先物価格は下落したが、攻撃開始前の水準は上回っており、貿易赤字の拡大が続けば成長率を下押しする。
SMBC日興証券は、中東情勢の長期化が回避されても、4~6月期から7~9月期にかけ「ゼロに近い成長率を余儀なくされる」と予測する。核問題を巡る両国の協議が不調に終わる可能性もあり、軍事的緊張が再燃すればマイナス成長に陥る恐れもある。
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/08/05
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/08/04
-
-
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-
-





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方