2016年の熊本地震で被災したイオン熊本店。余震が続くなか、広大な駐車場を市民に開放し、車中泊ができるよう整えた。店内が使えない状況の中、被災翌日から屋外で市民に必要な生活物資の販売を続けた。(2016年撮影)

2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震は、熊本県宇城市と氷川町で最大震度7を観測し、2016年の熊本地震を想起させる甚大な被害をもたらした。

今回の災害で社会に大きな衝撃を与えたのが、日本を代表する企業の被災である。地域防災拠点として位置付けられているイオンモール熊本で発生した爆発事故や、日本製紙八代工場の煙突倒壊、半導体工場や自動車関連工場の被災など。注目したいのは、これらの企業の多くが、防災やBCP(事業継続計画)の強化に継続して取り組んできた企業ということである。

イオンモール熊本で起きた爆発事故

熊本県嘉島町のイオンモール熊本では、地震発生当日の7月28日午後5時50分ごろ、大規模な爆発が発生した。建物2階部分や外壁の一部が崩落し、多数の従業員が巻き込まれた。事故原因は現在も調査中である。イオンは記者会見で、ガス爆発の可能性も視野に調査を進めていると説明している。

7月30日時点では、少なくとも7人の死亡が確認されており、亡くなった全員が専門店テナントの従業員とされている。救助活動は余震が続くなかで行われ、地域防災拠点として位置付けられていた施設で発生した事故は、大きな衝撃を社会に与えた。

イオンは、防災・BCPに継続的に取り組んでいる企業として知られる。私が2016年熊本地震を取材した際にも、訪問した企業の一つがイオンだった。

当時、イオン熊本店では天井材の落下やスプリンクラー配管の破損などの被害が発生した。しかし営業を全面停止することなく、広い駐車場を活用した屋外販売を継続するとともに、余震で帰宅できない住民へ駐車場を開放し続けた。

本社では地震発生から約30分後にグループ対策本部を設置し、テレビ会議で現地と情報共有を開始。独自の安否確認システムを活用し、数万人規模の従業員の安否確認を実施した。

さらに全国のグループ会社から約1100人の支援スタッフを派遣。薬剤師や保育士なども含めた人的支援を行い、自衛隊や物流事業者とも連携しながら約529万点の支援物資・商品を被災地へ送り届けた。

イオンでは東日本大震災以前から、約45万人が参加する年2回の総合防災訓練を実施している。役員を含めたブラインド型訓練や、自衛隊・物流事業者との連携訓練なども積み重ねてきた。

また、BCM5カ年計画の推進、BCPポータルによるサプライチェーン情報共有、リアルタイム情報集約システム、大規模安否確認システムの運用、自治体との包括連携協定など、国内でも先進的なBCM体制を構築してきた。

それだけに今回の事故は、防災・BCPに携わる多くの企業や関係者に大きな問題提起を投げかけるものとなった。防災・BCPを高度に整備した企業であっても、自然災害と複合災害の前では、被害を完全に回避することが極めて難しい場合があることを改めて示した。