政府が8月末から本格化させる2027年度予算編成では、経済安全保障や災害などのリスクに備える「危機管理投資」が柱となる。経済安保が専門の鈴木一人・東大公共政策大学院教授は20日までにインタビューに応じ、中東情勢や中国による経済的威圧を背景に、経済合理性だけではリスクを管理できない時代に入ったと指摘。民間のみでは必要な投資が進みにくく、政府の関与が鍵になるとの認識を示した。
 鈴木氏は「経済安保は経済成長の大前提になった」と強調する。その代表例に挙げるのが、日本の原油調達の中東依存だ。企業が安価で安定した調達を合理的に追求した結果、中東産原油に適した製油所への投資が進み、依存構造が固定化したと分析する。
 中国によるレアアースの輸出規制などの経済的威圧にも触れ、「安いものを安く買えばよい」という従来の発想は転換を迫られていると説く。
 企業にとっては、既存設備を前提に安価な調達を続ける方が合理的で、調達先の多角化は民間の判断だけでは進みにくい。「経済合理性を一定程度無視してでも、そのコストを支払い、リスクを回避する」発想が必要だとし、そのためには「政府の戦略的な関与」が欠かせないと訴えた。
 政府の役割は企業の投資の肩代わりではなく、企業が安心して投資できる環境を整えることだと位置付ける。政府が製品の買い手となる「出口」を用意することで、民間は設備投資など「入り口」の投資に踏み切りやすくなるとみる。
 こうした考え方は、政府が27年度予算で危機管理投資を柱に据えた理由とも重なる。ただ、危機管理投資や成長投資には多額の財源を要する。高市政権は経済成長による税収増を前提としており、「そんなに都合良くいくかは分からない」と慎重な見方も示す。 
〔写真説明〕鈴木一人 東大公共政策大学院教授(国際文化会館提供)

(ニュース提供元:時事通信社)