2014/11/21
セミナー・イベント
「PAS7000:2014」に基づくサプライヤーの管理手法
BSIグループジャパン株式会社営業本部営業戦略推進担当
東日本エリア営業部部長 鎌苅隆志氏
現在のサプライチェーンの課題とは?
「PAS7000」とは、「サプライヤーの事前資格審査のためのグローバル規格」で、年内にBSIが発行する予定になっています。ISO22301と同様に、PAS7000でもサプライチェーンを評価するときに、「G=ガバナンス」「R=リスク」「C=コンプライアンス」の視点で評価することが望ましいと言われています。これを利用することで、自社のリスクを低減していこうという考えがベースになっています。では、現在、サプライチェーンにおいてどのような課題があるのでしょう。
・市場や生産拠点のグローバル化にともない、サプライチェーンが非常に複雑化している
・多くの企業で、サプライヤー全体の85%が誰なのかわからないと言われている
・サプライチェーンでさまざまなリスクの懸念があり、ブランド価値やレピュテーションリスクの重要性が増加している
つまり、企業の価値基準やポリシーがサプライチェーンに浸透しており、統一されていることが非常に重要なポイントになるのです。組織の使命とか経営者の思いとか、企業によっていろんな価値基準があるので、きちんと浸透させ、統一させることが重要だと言われています。具体的には、
①サプライヤーの実態を表したプロファイルがデータベース化されている
②サプライヤーのリスクアセスメントが実施されている
③リスク特性に応じてサプライヤーが分類されている
④リスクが高い領域に、資源配分と活動がフォーカスされている
⑤重要な、あるいはハイリスクなサプライヤーに対して、現地検証が行われている
⑥サプライヤーのパフォーマンスが測定され、改善がはかられている
PAS7000:2014とは?
PAS規格とは「Publicly Available Specifications」(公開仕様書)、BSIがファーストトラックで策定する国際規格と位置づけられています。ISO規格に比べて素早く作成でき、柔軟で効果的であることが大きな特徴、メリットとなっています。
PAS7000は、GRCの視点でサプライヤーのあるべき基準が書かれていますが、規格が策定された背景には、次のようなものが挙げられます。
・GRC領域のサプライヤーの資格要件を国際的に定義づける
・サプライチェーンの理想像について専門用語の国際的な合意を得る
・GRCの基本原則を実践するためのガイドを与える
・ダイレクトサプライヤーとインダイレクトサプライヤーの区別をつけて適切な管理をしていく
・巨大なサプライチェーンにおいても、サプライヤーの事前評価が可能な方法を確立する
・リスク低減のために透明性を確保する活動において、コストと審査などの作業負荷を低減する
・レピュテーションリスクを管理するために必要な透明性とトレーサビリティを高める
現在はドラフト版の状態ですが、アメリカ、イギリスなどから40~50社が参加。うち、日本からは10社が参加しています。主な内容を紹介すると、組織のプロファイル、サプライヤーの能力とキャパシティ、財務情報と保険、雇用方針、労働安全衛生、情報の保護、環境マネジメント、品質マネジメントといった大項目の下に細かい質問事項があり、どこまでできているかを回答していくような内容になっています。
PAS7000のメリットはいくつもありますが、最も大きなものは、世界中にある多くのサプライヤーのGRC情報を集約した共通のデータベース化が可能になることでしょう。バイヤーにとってもサプライヤーにとっても、新しいビジネス機会を作っていく意味で非常に大きなメリットがあると思います。
発行された後にどれだけ深く広く使われていくかがカギとなりますが、PAS56がBS25999となり、ISO22301(事業継続)になったように、ISOにまでいく可能性もあると思います。
*注意:本講演録は2014年10月1日の段階の情報です。PAS7000は、現在発行され、日本語版の公開は12月を予定しています。
セミナー・イベントの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方