2016/05/27
業種別BCPのあり方
■安全確保のためのソフト対策
保育施設の職員は、子どもの負傷や発熱など高頻度低烈度型の事件・事故への対応は、日々の業務の中で習熟している。しかし、低頻度の災害については、日々の業務で習熟する性質のものではなく、施設として一定の方針を示しておくことの重要性は高い。緊急時の対応方針として、最低限以下の6項目はルールを決めておく必要がある。(表2)
■運営の継続・早期再開に向けた対応
子どもがいったん保護者の元に帰った後は、いつから保育施設の運営を再開できるかが大きな問題となる。現状、保育施設では、災害や事件事故発生時の初動対応マニュアルは作られていることが多いが、事業継続に関する取り決めはないことが多いようだ。文書として職員間で共有するかはともかく、事業継続計画策定の手法を用いて、保育施設の運営を阻害する事象への対応策を決めておくことは有効だと考える。主なものを以下に示す。(表3)
■対策の実効性向上に向けた取組み
表1や表2に示した部分は、日々の業務の中でも常に心がけておくべきことが多く、全職員に研修を行い、周知徹底を図るべきである。保育施設は毎月1回訓練を行う事例も多く、ほかの業種に比べると訓練は徹底されている。これに加えて、様々な事象に対して対応力を向上するべく、計画的に訓練のバリエーションを増やしていくことが重要である。
また、表3に示したような対策を、単独の保育施設で実施するのは難しいことが少なくない。普段から周辺の施設と情報の共有や交流を図り、助力や物品の融通などの支援を要請できる関係を作っておくことが保育施設にとっては存続の基盤となる。
また、リスクファイナンスという観点からは、補助金の確実な確保は重要である。過去の災害事例では、片付ける前の被害状況がわかる写真などがないために、国や地方自治体からの支援を十分に受けることができなかった事例があるようだ。被害を受けたら、写真をなるべく多く撮影しておくことを勧める。また、補助金に関する取扱いは災害発生直後から変更されるため、自治体との連絡を密にとることも心がけたい。
「災害時の保育園の危機対応に関する研究」石井博子ら、(保育科学研究第2巻2011年度)
- keyword
- 業種別BCPのあり方
業種別BCPのあり方の他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/18
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17
-
-
-
-
-
社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置リスクオーナー制の導入で責任を明確化
阪急阪神ホールディングス(大阪府大阪市、嶋田泰夫代表取締役社長)は2024年4月1日、リスクマネジメント推進室を設置した。関西を中心に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開する同社のグループ企業は100社以上。コーポレートガバナンス強化の流れを受け、責任を持ってステークホルダーに応えるため、グループ横断的なリスクマネジメントを目指している。
2025/11/13
-
リスクマネジメント体制の再構築で企業価値向上経営戦略との一体化を図る
企業を取り巻くリスクが多様化する中、企業価値を守るだけではなく、高められるリスクマネジメントが求められている。ニッスイ(東京都港区、田中輝代表取締役社長執行役員)は従来の枠組みを刷新し、リスクマネジメントと経営戦略を一体化。リスクを成長の機会としてもとらえ、社会や環境の変化に備えている。
2025/11/12
-
入国審査で10時間の取り調べスマホは丸裸で不審な動き
ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく4年。ウクライナはなんとか持ちこたえてはいるが、ロシアの占領地域はじわじわ拡大している。EUや米国、日本は制裁の追加を続けるが停戦の可能性は皆無。プーチン大統領の心境が様変わりする兆候は見られない。ロシアを中心とする旧ソ連諸国の経済と政治情勢を専門とする北海道大学教授の服部倫卓氏は、9月に現地視察のため開戦後はじめてロシアを訪れた。そして6年ぶりのロシアで想定外の取り調べを受けた。長時間に及んだ入国審査とロシア国内の様子について聞いた。
2025/11/11
-








※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方