A1-4 指示・命令するトップは参集できるのか 
多くの企業の緊急時体制は、対策本部長には社長、副本部長には副社長と、平常時の役職の序列に沿って定めています。

では震災直後に、本部長または副本部長が直ちに参集できるかといえば、大いに疑問があります。社長や副社長は多忙を極め、出張も多く、会社の近くに居住しているとは限りません。このため、あらかじめ本部長または副本部長を代行する危機管理担当責任者を定めているところもあります。 

いずれにしろ、指示・命令するトップが参集しなければ、組織的な対応ができないことは明らかです。また、従業員の安否確認や建物設備などの被害状況などの必要となる情報が入らない中で、どのような指示を出すかについて定めておくことが重要です。 

まずは参集できた人員で対策本部を設置すること、次に、1回目の対策本部会議での検討事項(災害の規模や被害状況等により対応は異なるものの、組織的な対応ができる必要最小限のチェック事項)を定めておくべきです。筆者が考えている事項は以下の通りです。なお、従業員の安否確認は、通信手段の復旧後に実施すれば良いと考えています。

A1-5 安否確認システム導入の前提条件 
震災など緊急時の従業員の安否確認については、委託業者から自動的にメール配信する「安否確認システム」を導入している企業がありますが、このシステムを使う場合、以下の点に注意が必要です。

 ①メール配信が可能な通信状況であること
 ②従業員の安否状況がメールで返信されること
 ③安否状況の集約結果について、メールで確認できること
 ④安否確認結果を踏まえ、必要な参集人員を確認できること
 ⑤参集すべき従業員に対して、参集するよう指示できること
 ⑥参集した従業員により、緊急対応業務が行われること 

このうち、⑥の緊急対応に疑問を持たれる方が多いと思われますが、前述したように安否確認の目的は「従業員が参集できるか」どうかの確認ですから、参集した従業員が何らかの緊急業務を実施できるようにしておく必要があります。 

このため、時系列に応じた業務内容と必要参集人員とを定めた「緊急業務実施計画」のようなものが必要で、かつ、従業員の緊急参集基準を定めておくことが、安否確認システム導入の前提条件になると考えられます。

A1-6 安否確認は、会社側から行うべき業務か
安否確認システム導入の有無にかかわらず、会社側から従業員に対して安否状況の報告を求めることの是非についても考えておく必要があります。震災直後、社内の限られた人員の中で、安否確認のために相当の時間を要することや、通信環境が輻そうする中「会社⇒従業員⇒会社」の2度にわたるメール送信は、現実的でしょうか。 

筆者は、「震災時の安否報告は、従業員の責務」として、従業員から会社側へ、できれば複数の指定したアドレスへメール送信を義務付けるべきと考えています。その際、「①自らが無事であるかどうか、②緊急参集ができるかどうか」の2項目だけの連絡で良いと考えます。そして、全従業員を対象にした安否確認訓練を年数回は実施することが重要です。 

なお、メール連絡がない従業員へは、通信手段の復旧後に電話連絡して確認することも定めておきます。