Q2 勤務時間内に地震発生した場合、会社として従業員や来客者の安否確認を誰が、どのようにして、何分程度で行うべきか?

A2-1 安否確認を実働訓練で実施したら、どうなったか 
勤務時間内に地震が発生した場合は、会社として安全配慮義務が生じることから、従業員や来客者の安否確認は直ちに実施すべき最優先業務で、しかも短時間で完了させなければなりません。 

そこで、いくつかの企業で、震災直後の安否確認と第1回対策本部会議について、実働で訓練を実施してみました。 

初めて実働訓練した企業においては、あらかじめ訓練概要を説明し、照明が消えたら地震発生・訓練開始としました。全員、机の下に入るなどの自身の安全確保はできましたが、部署単位で安否確認する際、課長が「全員大丈夫ですか」と声かけをしたものの、課員から「大丈夫です」との返答はありませんでした。 

また、別の企業では、数名の方に、①ケガをして痛いと騒ぐ、②ショックで机の下に声を出さずじっとしている、③突然外出して30分後に戻るなどの行動をとってもらいましたが、フロアの責任者や他の課員は、机の下でじっとしている方への声掛けをせずに安否確認を終了し、外出した方についても不在確認をすることができませんでした。 

訓練ですらこのような状態です。このような結果となった要因としては、これまでの多くの訓練が、「地震発生⇒火災発生⇒建物外への避難」といった訓練にとどまっていることにあると考えています。 

震災直後の対応訓練としては、①従業員と来客者の安否確認、②建物内外の被害状況把握、③火災等二次災害の拡大防止、④負傷者への対応などを行い、それらを踏まえて1回目の対策本部で「建物内に留まるか、建物外避難か」について判断することになります。 

現実に、震災直後の余震が続く中で、落ち着いて行動し、安否確認を確実に行うためには、「①従業員の一人ひとりの行動基準、②震災直後のチェックリスト」が不可欠です。 

A2-2 震災直後の行動基準とチェックリスト 
震災直後の行動は、災害対策本部から指示を受けて行うものではなく、従業員一人ひとりが自覚して行動することが必要です。行動基準の例は次のとおりです。

①自らの安全確保(机の下へもぐる、ヘルメットを着用するなど) 
②自ら安全であるための確認(大きな声で「大丈夫」と言う、自分の声が聞こえる、めまいがしていない、体に痛みや出血がない、歩行可能など) 
③周囲の人の安全確保(声掛け、負傷した場合の応急措置など) 
④フロア全体の安全確認(建物設備等の被害状況、エレベータ内の閉じ込め確認、火器や危険物の確認、危険個所の立ち入り禁止表示など) 
⑤フロア責任者への報告 

これらの行動ができた後、フロア責任者を交えた対策本部会議が開催され、従業員と来客者の安否確認と建物内外の被害状況等を確認し「建物内に留まるか、建物外へ避難するか」の判断をします。できたら30分以内には完了することが望ましいと思っています。 

ここで重要なことは、従業員からフロア責任者へ、そして対策本部へと自動的に報告がされることです。会社側(対策本部等)から、安否確認の指示がなくとも、対策本部室内にあるホワイトボードに安否状況が記載されるシステムができるよう、回を重ねて訓練することが必要です。 

震災直後のチェックリスト(特別養護老人ホームの例)は、以下をご参照ください。

今回のポイント 
①安否確認方法は、勤務時間外と勤務時間内では異なる
②安否確認以前に、「参集基準」「緊急業務実施計画」とを策定すべき
③震災直後の「行動基準」「チェックリスト」やが不可欠

次回は、「企業よ、無駄な備蓄をするな(備蓄倉庫は必要か)」です。