2019/02/13
インタビュー

最も効率の良い投資、衣服と住宅の共通点
あ:「これからのリノベーション 断熱・気密編」のなかで、伊藤さんのインタビュー記事を読みました。そのなかで伊藤さんが「住宅にとって断熱とは、メリノウールのインナーのようなもの」と話されていて、非常に腑に落ちました。
メリノウールとは、非常に繊維の細い高級な天然羊毛です。この素材でつくられたインナーは、綿や化繊のインナーと比べると高価ですが、非常に暖かく、一度買えば10年ぐらいもつ。冬の防寒着をたくさん持たなくていいので、服に掛けるお金も、収納場所も少なくできます。これまでの冬の服装選びを大きく変えてくれるアイテムです。自分の家にそんなメリノウールのようなものを着せることができたら、暮らし方自体が変わっていくんだろうな、とワクワクしました。

伊:そうなんです。
あ:どこにコストをかけるか。普段毎日使うものの選び方をちょっと意識するだけで、普段が快適で豊かになって、災害時にも役立つという好循環が生まれます。少しの知識があれば、日常の快適さと防災の備えを両立できる。これがメリノウールのような断熱の魅力です。
災害にも役立つ「断熱」の考え方
あ:私はアウトドア防災ガイドとして活動しています。私の役目は、アウトドアの知識を活かして、平時でも災害時でも使えるノウハウを提供することです。これまで大きなテーマとして冬暖かい服装選びを提案してきましたが、これは冬暖かい家づくりも提案できるのでは、と希望を持ちました。「断熱」というキーワードで2つは非常に共通しています。
防災の分野でも、「断熱」の効果をもっと災害現場で活かしていくべきだと思います。例えば、2018年夏の大阪北部地震や西日本豪雨での被災を教訓に、避難所に指定されている体育館でエアコン導入が進んでいるようです。でも考えてみれば、北海道胆振東部地震のように被災地で大規模停電が起きれば、エアコンはすぐに用をなさなくなってしまう。避難所にまず必要なものは、冷暖房設備よりも建物の断熱化です。
伊:たしかに体育館は天井が高く面積も大きい。そして、窓もあるけど日射取得しているイメージはないですよね。ここまでエアコン稼働に不利な体育館を避難所に使うのであれば、まず断熱にお金をかけるべきですね。
あ:住宅も同じなんです。平時に冬にできる限りエアコンに頼らない断熱性の高い家が普及していれば、災害時にも人が避難しあえる地域ができる。長野県では、環境配慮型住宅に対し、新築の場合は最大80万円、リフォームの場合は最大50万円の助成金を設けて、住まいの断熱化を推進しています。これは災害時にも役立つので私が今、注目している制度です。
■長野県「環境配慮型住宅助成金(リフォームタイプ)」の案内
https://www.pref.nagano.lg.jp/kenchiku/documents/reform_fix.pdf
インタビューの他の記事
おすすめ記事
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方