事業検証にも注力

耐震化や不燃化に伴う用地取得の減少などで、ハード中心の地震対策は0.7%減の約1411億円と微減だが、小池知事が注力する無電柱化の推進は6.2%増の約306億円。ここでも防災を重視。災害拠点病院や庁舎といった防災拠点に接続する区市町村道の無電柱化に都が本来は区市町村が負担すべき費用の4分の1を追加負担する。既に都が4分の1を負担することになっているため、国と都が半分ずつを負担することになり、区市町村の負担はゼロとなる。「防災緊急パッケージ(仮称)」と題し2019年度は2億円を計上する。2024年度まで補助を行う予定。

直接の災害対策ではないが、気候変動対策として省エネ性能の高い新築住宅への補助約18億円なども新たに計上された。2018年の台風や豪雨、地震災害の影響のほか、環境大臣を務め、地元の兵庫県芦屋市が被災した1995年の阪神・淡路大震災の経験もあり防災に注力する小池知事のカラーが強く出た2019年度予算案。都では2018年9月には防災事業の総点検を実施し、区市町村や個人へのタイムライン普及・作成支援や調節池整備の推進、停電対策を打ち出していた。

小池知事は25日の記者会見で、予算案における災害対策について「防災事業の総点検を踏まえ、ソフト・ハード両面で展開する」と説明。さらに「(東京オリンピック・パラリンピックのある)2020年だけでなくその先も見すえ、後でより課題が大きくなってしまうことを防ぐために今、種をまいておく」と述べた。個人に重きを置いたタイムライン作成支援については「学校でみんなで作るなど、子どもが学ぶ機会を作ることが重要。災害時は一人一人の行動が生死を分ける」とし、タイムラインを理解することで事前の準備や心構えができる大事さを述べた。区市町村については「地域ごとの特色がある。都も連携し、引き続き支援したい」と説明した。

PDCAを重視し、2019年度予算案では837件の事業を見直し・再構築し、411件の新規事業を行う。これらはいずれも過去最高。今回、税収が5.2%増で史上2番目の5兆5032億円となり、過去最大の一般会計が組めたが、過去にはリーマンショックで2009年度は税収が前年度から約1兆円減ったことがあるほか、2019年度税制改正によるいわゆる地方税の偏在是正措置により、2020年度以降は年間約4200億円の減収が見込まれている。災害対策でも多くの新規事業が行われるが、長期的な視点での検証が今後も欠かせない。

都では25日に2017~20年度までの実行プランをブラッシュアップした「『3つのシティ』の実現に向けた政策の強化(2019年度)」も発表。先述した区市町村庁舎の非常用電源設置等支援について今年度末は1団体だが、2020年度に40区市町村を目標とした。ほかにも小池知事の肝いりで始まった、職場や地域の避難所で災害時に活躍できる女性人材の育成は今年度末1000人の見込みを2020年度に3000人を目指す。

■予算案はこちら(東京都財務局ホームページ)
http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/zaisei/yosan/h31.html

■「3つのシティ」の実現に向けた政策の強化(2019年度)
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/01/25/14.html

(了)