2019/02/06
防災・危機管理ニュース
東京都と東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会は6日、第4回交通輸送技術検討会を新宿区の都庁で開催した。渋滞が懸念される首都高速道路の交通量削減へ、大会中の値上げ、ナンバープレートによる規制、HOVレーンと呼ばれる複数人員乗車車両の専用レーン設置の3つが案として提示された。今後、シミュレーションなどを基にどの案を採用するか検討する。
都、内閣官房、組織委では時差出勤や大会期間を避けた物流利用といった混雑緩和に向けた取り組みを「2020TDM推進プロジェクト」として民間にも協力を呼びかけ。大会中の交通量全体を大会前の10%減とすることを目指している。しかし交通量全体が10%減となっても、移動の時間短縮を図る利用者もいることから、首都高の利用台数の減少は6%しか見込めないと試算。首都高の渋滞による損失時間は平日現況を100とした場合、交通量全体の10%減ができたとしても105、何も対策がなされなかった場合は188まで上昇することが見込まれている。
このため首都高についてはさらなる対策が必要と判断し、3つの案が提示された。料金は現在、普通車でETCを利用した場合の上限は1300円だが、混雑が見込まれる区間や時間帯にさらなる課金を行う。ナンバープレート規制は末尾が偶数なら偶数日、奇数なら奇数日のみで分けて通行を認めるといった例を提示。HOVレーンは相乗りを促し、通行する車の台数を抑制する効果がある。なお、物流車両には規制を適用しない方針。
都と組織委では今後、国土交通省と首都高の運営会社にシミュレーションを依頼。それもふまえて今後の方針を決める。複数の施策を組み合わせる可能性もあるという。値上げの場合は料金システムの変更が必要となるほか、ナンバープレート規制やHOVレーンでは通行が適正な車両かどうかを識別する方法といった課題もある。また、規制に対しドライバーの反発も予想される。
今年度末に第5回の検討会を開催し、2度目となる輸送運営計画案を作成される予定となっている。しかし、都と組織委は首都高の規制についての決定は未定としている。ナンバープレート規制と渋滞対策での値上げはこれまで国内で実績はなく、HOVレーンの導入も過去には仙台市などで例があるが、現時点では行われていないという。
また鉄道に関しては、インターネットで公開している大会中の混雑予測である「大会輸送度影響マップ」に駅構内の混雑具合を今月下旬に公表することが明らかになった。
■大会輸送影響度マップ
https://2020tdm.tokyo/map
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
- keyword
- 東京五輪
- 東京2020
- 東京オリンピック・パラリンピック
- 東京都
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方