2019/02/19
防災オヤジーズくま隊長の「知らないとキケンな知識」
3.呼吸の確保
先のシミュレーションでもありましたが1階で火災が拡大延焼しても煙・有毒ガスから呼吸を守れればかなりの時間稼ぎが可能です。また自力脱出も可能です。消防隊が救助に来ても大量の有毒ガスを吸っていてなんとか助け出したのに病院で死亡が確認されたなどは連日のように報道されております。呼吸の確保がなされれば自力で動くこともできますしパニックにもなりにくいです。
そもそも自力脱出できれば消防隊が救助のためにわざわざ危険な建物内に侵入しなくてすむのです。呼吸保護具(防毒・防煙マスク)は戸建こそ必要な保護具です。最近は集合住宅の火災もよくあります。
下層階で出火しても防火区画(扉などをきちんと締める)が形成されていれば延焼は抑えられますが煙有毒ガスはどんどん侵入してきます。外傷(火傷)が何ら無くても死亡しているのです。呼吸の保護は大変重要です。最近ネットで販売されている防煙マスクや防災フードなどの商品で粗悪な製品が多く見受けられます。日本には消防庁が決めた規格基準がありますのでそれに合格した商品を選びましょう。「一般財団法人日本消防設備安全センター 評定合格品」がベストです。
また、単なるポリ袋を防煙フードなどと称している製品も見られますが論外です、これをホテルの客室に常備している恐ろしいホテルも見受けられます。安全配慮義務違反ですね。即、生死に直結する道具ですのできちんと選びましょう。呼吸保護具については別の機会に詳しく解説いたします。
http://smokeblock.rescueplus.jp/(当然ながら自宅3階寝室すぐ手が届くところに2個置いてます)
4.戸建の2~3階からの脱出
ビルや共同住宅の場合は水平避難(同じ階の他の防火区画へ避難)や2方向避難(別々の階段)が可能ですがほとんどの戸建は水平避難も2方向避難もできないのが現実です。先のシミュレーションでも階段をのぞいたら猛煙が侵入し窓からの脱出しか逃げる道が無い状態でした。しかし2階といえどもかなりの高さがあります。
若い時でしたらなんとかなるかなと思っていましたが、現実の火災で2階から飛び降りて重傷を負っているり災者が多くいます。まして3階からはとても無理です戸建の犠牲者の多くが2~3階で亡くなっております。
そこで第2の脱出ルートを確保できるのが避難ばしごです。煙が充満し始めても防毒・防煙マスクで呼吸が保たれれば落ち着いてはしごで脱出できます。
http://www.hinan-hashigo.com/(自宅3階寝室からの脱出に3階用備えています)
5.その他の保護具
戸建の火災の発生時間は大部分が就寝時です。従って裸足でパジャマ、とても無防備です。履物もスリッパ程度。万が一の場合、防煙マスクを着装して窓に避難梯子をかけて窓から脱出。直ぐに履ける靴とすべり止めのための手袋を用意しましょう。当自宅には避難ばしごと一緒に寝室のクローゼットに収納してあります。
最後に、防災用品、備蓄品などいろいろなものが市場に出回り何をどれくらい揃えればよいか多くの方が悩んでいます。会社での備蓄、学校での備え、病院での備え、それぞれ施設・用途・収容人員などの違いでさまざまなパターンがあると思います。しかし、共通している備えは生命の安全が最優先であるということ。ここを飛ばして、やれ備蓄食料だ、やれ簡易トイレだと言っている人の何と多くいることか。
そして自分たちだけが被害者になるだけではなく、救助に来た消防士まで犠牲になるなんておかしくありませんか。もう一度見直しをして疑問があれば信頼できる専門家に相談してみましょう。
もう一度言います。 消防士を殉職させるな!!
(了)
防災オヤジーズくま隊長の「知らないとキケンな知識」の他の記事
- 第7回 相次ぐ建設現場における火災
- 第6回 なぜ戸建住宅火災で死亡するのか
- 第5回 火災による死亡原因のほとんどは「煙」にあった
- 第4回 知ってましたか?消火栓は誰でも使えます!
- 第3回 消火器で火災は消せません!
おすすめ記事
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方