2019/02/26
防災・危機管理ニュース

立命館大学は26日、「災害大国・ニッポンの歴史から学ぶ『減災のススメ』~ヒントは未来の技術じゃなく、過去の教訓にあり~」と題したプレスセミナーを、東京都千代田区の立命館東京キャンパスで開催。山崎有恒・文学部教授が歴史学の観点から災害について語った。
立命館大では文部科学省の補助事業だったグローバルCOEプログラムを受け、文化遺産の保全と災害対策を一体として考え、災害から文化遺産を保護するための文化遺産防災学の取り組みを行ってきた。2013年にこれまでの歴史都市防災研究センターを改組し、「歴史都市防災研究所」を設立している。これまで文化遺産保護研究や外国人観光客の避難のシミュレーションなども行った。
山崎教授は近代の政治史を主に研究。「防災を歴史学からとらえる研究者はほとんどいないだろう」とまずは語った。そして明治期に発行された京都日出新聞(京都新聞の前身)に掲載された京都の災害に関する記事のデータベース化に取り組んできたことを説明した。
山崎教授は近世以前、災害は起こることが前提という考えだったとして、京都であれば賀茂川(鴨川)で水害が多く、遊水地が多く置かれたことを語った。そのうち市街化したものの一つが京都市の繁華街である河原町だという。また「近世以前、住宅密集地だった京都は大火事が起こりやすい環境だったため、初期消火を重視した世界一高度な防災都市だった」と説明。火事を起こすと強制退去になったほか、水を運ばないなど協力を怠った住民には高額の罰金もあったという。
近代化以降は消防が官設組織になったほか、災害対策が行政任せとなり、テクノロジーにも依存するようになったことを挙げ山崎教授は「日本人の防災意識の低下が近代化最大の問題」と指摘。防災教育やさらに歴史から防災を学ぶことの重要性を訴えた。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年9月26日配信アーカイブ】
【9月26日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:2023年7-9月四半期振り返り
2023/09/26
-
-
GX支援のアイ・グリッド 防災・BCPへの訴求を強化
企業向けグリーン電力供給のアイ・グリッド・ソリューションズは、気象災害の激甚化からレジリエンス対策のニーズが高まるとみて、防災・BCP面の訴求を強める考えです。このほど、エネルギーリスクと独立電源に対する意識を調べるため、全国の経営者にアンケート調査を実施。事業継続に加えて地域貢献への意向が強いことがわかりました。
2023/09/21
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年9月19日配信アーカイブ】
【9月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:未知のリスクに備える
2023/09/19
-
「回復」から「成長」へ 復旧フェーズを格上げ
フッ素樹脂メーカーのニッキフロンは2019 年の台風19号で本社工場機能の大半を喪失。被害と財源を見極め早期に復旧方針を決めると、主要製造ラインの迅速再開と代替生産で出荷の維持に努めました。一時は大幅に売上を落としたものの、取引先などの応援もあって、1年半後には被災前と同レベルに回復、その後は新たな成長フェーズに入っています。
2023/09/18
-
花王のリスクマネジメント改革
1890年に高級化粧石けん「花王石鹸」を発売してから130年以上にもわたり、家庭で愛用される、洗剤を中心としたさまざまな製品を世に送り出してきた花王株式会社。1999年にリスクマネジメント体制を整備した同社は、2016年にリスクマネジメントの改革に乗り出した。現在は、ERM(全社的リスクマネジメント)を展開し、将来直面するだろう未知のリスクにも対応できる体制を整えている。
2023/09/18
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方