2019/03/12
地域と企業のBCP
企業は地域と共存している
企業は、電気、水道、ガスなどのライフラインや道路、公共交通機関など社会インフラを近隣の企業や居住者と共有して使用し、実質的には共存しています。
BCPがある程度形になり、訓練を繰り返し行っていくと、自社だけでBCPを遂行することが困難なことに気づくでしょう。それは、どのような業種でも1企業単体ですべての事業を完結することは困難であること、さらに事業の多くが地域の社会インフラに依存しているからです。
この社会インフラに関する整備状況や災害による被害想定、緊急時の防災情報は、事業所が所在する地域を管轄する国の機関や市町村役場から発信されます。災害発生が心配されるような緊急時にこれら情報の意味を即座に理解し、適切な事業継続活動に結びつけることはなかなか難しいです。
ハザードマップを読み解けますか?
例えばハザードマップ。BCPを策定する上で一度は確認したことがあるかと思いますが、ハザードマップで示される震度や浸水範囲・深さ、その根拠である想定条件が示す意味について、ハザードマップの紙面から読み取ることは実は容易ではありません。


事例でご説明します。上図は平成30年7月豪雨で甚大な被害が発生した倉敷市真備町のハザードマップです。実際の浸水域とハザードマップの想定浸水域がよく一致していたとされています。下図は国土地理院のウエブサイト「地理院地図」を利用して標高の高低を筆者が色分けしたものです。双方を見比べていただくと、ハザードマップで着色されている範囲と標高が低い範囲(青~緑色)もよく一致していることがわかりますよね。
理屈は簡単です。水は高いところから低いところに流れます。ハザードマップでは氾濫の影響がある範囲が着色されていますが、それは当然周辺地域と比較して標高の低い地域ということです。一方、ハザードマップは、ある降雨条件を想定し、堤防の破堤箇所を設定して氾濫した結果が着色されています。つまり、この想定条件ではない状況で災害が発生した場合はハザードマップ通りの結果にはならない可能性があります。
ですから、ハザードマップは結果のみに着目するのではなく、結果の背景にある想定条件や自社の立地状況、過去の災害発生状況をふまえて“読み解く”必要があるのです。
地域と企業のBCPの他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方