プレハブの仮設庁舎。ここにはサーバー室を設置できなかったため、中央公民館に(2012年1月19日筆者撮影)

住基ネットの復旧プロセス

前回の記事に、「サルベージにより復旧した3月11日時点の住基データを使って4月13日に仮サーバーが設置された」とあります。その後、4月25日から、大槌小学校の校庭に設置された仮設庁舎で窓口業務の一部が再開されました。住基ネットの復旧には、通信回線の敷設とファイアウォールおよびコミュニケーションサーバーの設置が必要となりました。サーバー室は中央公民館に設置されました。サーバー室設置工事と回線の引き込みは6月15日(前回登場した中央公民館と仮設庁舎間のネットワークシステムとは別物です)に、ファイアウォールの設置は6月29日に行われました。住基ネットのコミュニケーションサーバーは7月6日ごろ設置され、データ調整などを経て、震災から約4カ月が経過した7月15日に住基ネットが再稼働して、ネットワーク経由による他市町村からの異動処理の把握が可能となりました。この情報を利用して、選挙実施のための選挙人名簿の確定作業が行われたのです。町長選挙は、2011年8月28日に実施されました。
大槌町の担当者は、次のように回顧しました。

「災害時に住民基本台帳ネットワークシステムや、サーバー・その他の機器を失うことは予想していなかったため、システムの復旧には多くの作業が必要でした」

当時、システムを最初から、新しい機器で復旧させるための準備や、データが失われた際の復旧手順を示したガイドラインはありませんでした。今回のテーマではありませんが、こうしたガイドライン類も組織資本と言えます。大槌町の担当者は、頻繁に住民基本台帳ネットワークシステムの管理センターに連絡し、復旧のために必要な手順について問い合わせを続けたのです。