2019/04/03
レジリエントな社会って何?
セキュリティーがハードルになる
これまで見てきたように、シンボル資本の回復(今回のケースの場合は大槌町の町長)には、非常に複雑な行政プロセスが必要となりました。このプロセスは、経済資本(サーバー)、組織資本(データやマニュアル)の両方の機能に依存していました。住基ネットは、住民の住所や生年月日といった個人情報を扱うというシステムの性格上、セキュリティーのかけ方が複雑で高度な構造となっており、いざ再構築しようとした際、セキュリティーがハードルとなるというジレンマも発生しました。
大槌町が失ったのは町長だけではありません。多くの職員が被災しました。人間資本が失われると、その人が保有していたノウハウや知識も同時に失われます。大槌町に限らず、多くの被災自治体が、職員を失い、他の自治体に応援職員を要請することになりました。日頃付き合いのある自治体に応援を要請する自治体もあり、ここでも社会関係資本の働きが観察されました。情報システムの運用に関しては、個人(人間資本)の中に蓄積された暗黙知によるところが大きく、町の外から来た応援職員がスムーズに業務に参画することが難しい、といったケースもありました。人間資本が喪失した場合のプロセスについては、前回の経済資本や組織資本の喪失時の対応同様、事前に対応を定めていた自治体はありませんでした。
まとめますと、公共部門における人間資本およびシンボル資本の喪失は、法的あるいは公的に決められた要件に沿った形でカバー する必要がある、ということがお分かりいただけるかと思います。シンボル資本の回復には、さまざまな行政プロセスが必要となり、復旧プロセスに与える影響は大きくなります。
公共部門、と言っていますが、民間企業においても同じことが言えると思います。皆さんの企業では、人間資本やシンボル資本の喪失への対応について、どのように定められているでしょうか。
* A. Dean and M. Kretschmer, “Can Ideas be Capital? Factors of Production in the Postindustrial Economy: A Review and Critique,” Academy of Management Review, vol. 32, no. 2, 2007, pp. 573-594. および M. Mandviwalla and R. Watson, “Generating Capital from Social Media,” MIS Quarterly Executive, vol. 13, no. 2, 2014, pp.97-113. を改変。
(了)
レジリエントな社会って何?の他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/10/27
-
個人情報漏えいはPHP修正で止まらない続発する不正アクセス
Webシステムからの個人情報漏えいが止まらない。企業規模を問わず、不正アクセスによる情報漏えいの公表が相次いでいる。さらに、Webシステムで広く利用されているプログラミング言語PHPの重大な欠陥が公表され、政府が修正対応を呼びかける事態にまで発展した。なぜ今、個人情報の漏えいが急増しているのか。10月7日にいち早く分析結果を公表したマクニカ・セキュリティ研究センターの瀬治山豊氏に話を聞いた。
2026/10/27
-
-
-
-
-
-
-
-








※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方