第7回 企業組織のリスク・レジリエンス構築への道
リスク認識と対処行動のギャップを埋めよ

鈴木 英夫
慶應義塾大学経済学部卒業。民族系石油会社で、法務部門・ロンドン支店長代行・本社財務課長など(東京・ロンドン)。外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務め、危機管理広報・リスクマネジメントを担当(大阪)。現在は、GRC研究所代表・研究主幹、リスクマネジメント&コンプライアンス・コンサルタント(兵庫)。日本経営管理学会会員、危機管理システム研究学会会員。
2025/10/14
新 世界のリスクマネジメントの潮流
鈴木 英夫
慶應義塾大学経済学部卒業。民族系石油会社で、法務部門・ロンドン支店長代行・本社財務課長など(東京・ロンドン)。外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務め、危機管理広報・リスクマネジメントを担当(大阪)。現在は、GRC研究所代表・研究主幹、リスクマネジメント&コンプライアンス・コンサルタント(兵庫)。日本経営管理学会会員、危機管理システム研究学会会員。
組織は、かつてないレベルの経済的・技術的・地政学的混乱に直面しており、より積極的なリスク管理戦略が求められている。あらゆる組織にとって、全領域のリスク管理とレジリエンス能力を構築するだけでなく、リスクとレジリエンス計画を実行するための実践的な戦略を策定することが重要である。
大規模な組織で働く200名以上の経営幹部を対象とした2025年KPMGリスク・レジリエンス調査では、「レジリエンス向上の緊急性に対する組織の認識」と、組織が現在直面している「脅威や混乱に対処するために必要な、迅速かつ機動的で継続的なリスク管理策の実行」との間に、深刻な乖離があることが明らかになった。
レジリエンスは企業の存続と成功にとって極めて重要であるため、このギャップを埋めることは、あらゆる業界の経営幹部にとって最優先事項だ。まずは、リスクとレジリエンスに関する戦略・組織構造・ツール、そして能力の全体にわたって、何が機能し、何が機能していないかを評価する必要がある。
KPMGの調査では、リーダーたちはリスクとレジリエンス管理の重要性を認識しているものの、多くの企業には突発的で広範な混乱に対処するために必要な体系的なシステムが欠如していた。リーダーのほぼ半数(48%)は、組織がリスクとレジリエンスを管理する一元的な体制を備えていると回答したが、重要なプロセスを超えたレジリエンス計画を策定している企業はわずか17%でしかなかった。
さらに、調査では以下のことが明らかになった:
・26%の組織のみが、緊密な連携体制と、リスクに関する包括的かつ部門横断的な視点を有していた。
・15%の組織のみが、リスクの特定・監視・管理において高度な分析に大きく依存していた。
・41%の組織が、リーダー陣のリスク管理能力に高い信頼感を示した。
これらの結果は、多くの組織が動的なリスク環境に対応するための俊敏性に欠けていることを示唆している。特定のリスクの追跡に重点を置き、広範囲にわたるリスクの影響を管理したり、広範なリスクカバレッジを確保したりするための可視性を備えていない。事後対応型のリスク対策は、危機の予測と対応において効果的ではない。
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