2016/05/20
講演録
TIEMS日本支部第9回パブリックカンファレンス
災害とテロ、身近な危険を知る
防衛医科大学校免疫微生物学講座准教 木下 学氏
CBRNEとは何でしょうか。昔から戦闘がある場所では人を傷つけたり、傷つけられたりしますが、昔は刀や弓矢で戦っていました。その後は火薬が発明され、鉄砲や大砲、爆薬で人を傷つけることが行われました。第一次世界大戦の時、対峙する両軍が第1戦線でマスタードガスを使用しました。マスタードガスは化学剤なのでChemicalですね。細菌兵器はまだ実戦では使用されていませんがBiologyです。その後、第二次世界大戦で核兵器が日本に対して使用され、これは放射線を発しますのでRadicalもしくはNuclearになります 。これらの頭文字をとってC BRNとなります。ここに、現在はExplosionのEを入れてCBRNEとなります。
現在はIED(簡易爆弾)によるテロがアメリカで大きな問題になっています 。最 新の情報ではイラク・アフガンでの戦争の負傷者の50%がIEDで負傷しており、米国政府も無視できない状況になったので CBRNEとなったようです。
実は、日本はCBRNEテロの被害を最も多く受けた国です。まずは1974年の三菱重工爆破事件。その後、1990年にオウム真理教がボツリヌス菌のテロを仕掛けています、1993年には同教団の亀戸道場で炭疽菌を使った事件がありました。これらは失敗し、おそらくバイオテロは効率が悪いと考えて化学テロに移っていったと考えられます。これが1995年の地下鉄サリン事件です。その後2013年に東日本大震災による福島県の第1原子力発電所の事故による放射線の問題。日本という国は世界で見ても珍しいほどCBRNEの被害にあっている国と言えます。
さて、災害とテロは何が違うのでしょうか。3.11の東日本大震災と、9.11の米国同時多発テロ事件は両方とも全く予期せぬ出来事なうえに、善良な市民の命が多数奪われるという耐えきれない精神的苦痛があったかと思います。そのような意味では2つの事件は同じですが、後者には実に明確な意図、つまり敵意があったことで全く違ったものになりました。
3.11のときに、政府はただちに自衛隊を10万人投入しました。通常の用兵では前線に配置するのは全体の5%といわれており、残り95%は後方支援に回らなければいけない。それを日本政府は50%の隊員を前線に回しました。5%であれば本来は200万人の軍隊がおこす行動を、わずか20万人でやっていた。このことに世界が驚愕しました。これが本当の国力だと思います。
9.11はどうでしょうか。これは明らかに人の確固たる意志、敵意を持って行われています。向こうも命をかけて、最高に研ぎ澄まされた、洗練されたやり方で、同時多発で攻めてきた。これはテロの鉄則です。
ただし、災害も大規模なものになると複合災害になります。われわれが大震災が発生したときに最も懸念したのが福島原発の事故でした。地震災害、津波災害、原発事故が複合して発生したのです。
CBRNEといっても、化学テロ、バイオテロ、爆弾テロは明らかに敵意がありますが、原発事故や倒壊事故は自然災害で敵意はなかった。被害の度合いは両方とも甚大ですが、この2種類には明らかな差があります。
テロと言うものは、大量殺りくと心理的な動揺とどちらが重要かという話があります。予想を反して、テロの目的は「大衆を不安に陥れる」の1点だけです。被害の程度には関係がなく、むしろ被害が少ない方が効果的ではないかと考えています。もう1つは明確な意図です。自分たちの主張を通すことなどです。アメリカ政府は9.11以降、情報収集と分析の方針を大転換しました。もともと彼らは海外で危険はあったのですが、国内は南北戦争以降は絶対安全な場所だと思っていました。そこにテロが発生したので、政府も統治体制を変えたのです。
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/06/23
-
W杯に水を差したDAZN契約プラン表示が原因で大炎上
世界最大のスポーツイベントであるサッカーのW杯が6月12日に開幕。日本は1勝1分けで決勝トーナメント進出を大きく引き寄せている。その裏でW杯の視聴契約を巡ってSNSで大炎上していたのが、スポーツコンテンツの配信会社であるDAZNだ。W杯の全試合を視聴できる年間契約プラン表記に問題があり、13日にお詫びを発表した。しかしその対応も反感を買い、炎上は継続。最終的には年間プラン自体を取り下げた。DAZNの何が問題だったのか、消費者問題に詳しい住田 浩史弁護士に聞いた。
2026/06/23
-
-
-
-
企業の副業解禁とコンプライアンス対策を支援
企業の副業解禁の流れが加速している。従業員は本業以外の労働を増やすことで、収入増が見込める。従業員が副業で獲得したスキルで、本業への貢献も期待できる。企業側にとっても、副業は採用活動に活用できる。業務発注から関係を深めてからの転職や採用後のミスマッチを防止する効果がある。一方で、副業の一般化に伴い、同業他社での競業や情報漏えい、ブランド毀損、過重労働など、副業リスクは増加している。フクスケ(東京都千代田区)は、企業の副業制度の運用支援に加え、副業コンプライアンス向上に関するデータを分析し、リスク診断サービスも提供している。代表取締役社長の小林大介さんに、企業の副業解禁がもたらす影響について話を聞いた。
2026/06/12
-
-








※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方