9 月15日に品川フロントビル会議室で行われたパブリックカンファレンス

TIEMS(国際危機管理学会)日本支部は2015年9月15日、「あなたのまちの危険物質を考える~テロだけではないCBRNリスク~」をテーマに、第10回パブリックカンファレンスを都内で開催した。

講演を行ったのは、株式会社重松製作所社長付主任研究員(元陸上自衛隊化学学校副校長)の濱田昌彦氏、一般財団法人全国危険物安全協会理事(元東京消防庁警備部長)の佐藤康雄氏、NEC株式会社東京オリンピック・パラリンピック推進本部パブリックセーフティ事業推進室エキスパートの宇田川登紀氏。

濱田氏は、「地下鉄サリンを超えて~東京オリンピックを見据えて~」と題し、1995年の地下鉄サリン事件における陸上自衛隊の対応や問題点を洗い出すとともに、米国の地下鉄や空港などにおけるCBRN対策やブラジル陸軍のリオデジャネイロ・オリンピックに向けた対応などを解説した。佐藤氏は、「福島第一原発事故への消防対応~特殊災害への備えと対応」と題し、2013年の東日本大震災における原発事故に消防の対応と、原発事故に対応できる危機管理人材の育成を訴えた。宇田川氏は、「大規模スポーツイベントにおけ危機管理~ボストンマラソン&ロンドンマラソンの事例から」と題し、両マラソン大会におけるCBRN対策とリスク評価の重要性について考察した。

続いて、濱田氏、佐藤氏、宇田川氏に加えて代表理事の林春男氏をパネリストに迎え、パネルディスカッションを行った。コーディネーターは新潟大学危機管理室教授の田村圭子氏。

パネルディスカッションの様子

「オリンピックなどのイベントで何かしらのテロが発生する場合、考えられ得る最も可能性の高いものは?」という会場からの質問に対し、濱田氏は「テロリストの立場になって考えると、一般的に言われているのはCBRNのC、化学物質によるもの。オリンピックでいうと、工業地帯が近くにあるので、それらを破壊すれば産業属性物質のガスを会場に流すこともできる」とテロの脅威について話した。また「限られた予算のなかでCBRN対策をするにはどうしたらよいか」との質問に、同氏は「危機管理対応は80%までの手順は変わらないため、そこをまずしっかりおさえておく。残りの専門的な20%について、必要最低限の知見や装備を持つことがまず第一歩なのではないか」とした。

佐藤氏は「先ほど、原子力災害に消防がいかに対応したかを話したが、実は現在は、原子力災害には消防は対応しなくて済むような体制づくりをしている。今回は偶然が重なって全隊員が対応したが、一歩間違えれば非常に危険な状況だった。原子力の責任者である事業者が、自己責任でしっかり対応できる体制を構築しなければいけない」と、改めて原発災害対応の難しさを語った。

宇田川氏は「現在、当社のなかでは、ドローンを使ったセキュリティを模索している。非常に難しい分野だが、新しいアイデアがあれば一緒に研究したい」と呼びかけた。

林氏は学会の総括として、「2004年に国民保護法が可決され、都道府県は国民保護計画を策定。翌05年にはそれを受けて全国の市町村が国民保護計画を作ったが、イスラエルなどでは全国民に対してマスクが配布されているのに比べ、日本は一部を除いて極めて意識が低いのが実態だ」と警鐘を鳴らした。