2019/05/31
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
自治会や自主防災組織の1割と行政9割負担で撤去 個人でなくても補助金を申請できる串本町
次の本気の自治体は和歌山県串本町です。
和歌山県串本町は本州最南端の町です。
串本町HPより
串本町も南海トラフ地震で津波到着時間が早く、5分以内という場所があります。ですので、避難道のブロック塀対策が重要になります。
串本町の補助金額はこちらです。
撤去は費用の10分の9までで上限30万円となっています。撤去について10分の9補助額があることも特徴的ですが、もうひとつ、とても画期的な制度が串本町にはあるのです。
それは、2014年4月に施行された<串本町地震・津波避難路確保のための補助金交付要綱>の中の以下の条文です。
第3条 補助金の交付を受けることができる者は、次に掲げる者とする。
(1) 串本町内の道路に面するブロック塀等若しくは土地を所有する者又は管理する者
(2) 町長が認める自治会又は自主防災組織
https://www.town.kushimoto.wakayama.jp/reiki_int/reiki_honbun/r218RG00000429.html
注目すべきは(2)です。補助金の交付が受け取ることができる者に「町長が認める自治会又は自主防災組織」が新しく付け加えられました。
これが入ったことで何が変わるか分かりますか? 自宅のブロック塀を撤去する場合だけでなく、自治会や自主防災組織が避難の際、危ないと判断した他人のブロック塀について、自治会や自主防災組織が補助金を申請できることになるのです。
これ、すごくないですか? 串本町に問い合わせたところ、自治会や自主防災組織は、所有者の承諾と印鑑をもらい、行政に申請するとのことです。そうすると、撤去についていえば、9割が補助金、1割は、自治会や自主防災組織の負担で地域の危ないブロック塀を撤去できるようになります。所有者の負担は0円です。
地域の人があそこは危ないなと思っても何も言いだせずにいるという状況はよく耳にします。所有者もあそこは空き家で放置しているからなんて事もあります。そんな状況でもブロック塀が撤去できるよう地域住民を後押しする制度ですよね。行政任せにしないで、自治会や自主防災組織が、積極的に津波避難に取り組む事にもつながるので画期的な方法だと思っています。しかも、既存の補助金の額を変えなくても、要綱で補助金交付者を拡大するだけでいいのです。追加でかかる予算は不要です。他の自治体もすぐに実践できるのではないでしょうか?
実際に串本町でも、自治会や自主防で申請できたらいいのにという声があったから要綱を変更されたとのことで、すでに1件の実績があるとのことです。
こんな頭脳派な解決を図った串本町のふるさと納税は干物が人気なんですね!
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/24
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方