写真を拡大 国立感染症研究所による7月10日時点の麻疹発生累積報告数(赤線)。今年は2013年に次ぐペースとなっている(https://www.niid.go.jp/niid//images/idsc/disease/rubella/2019pdf/rube19-27.pdf

感染経路、感染力

感染経路は麻疹(はしか)のような空気感染ではなく飛沫感染です。飛沫感染とは病原体を含んだ気道分泌物やだ液が、患者のせきやくしゃみによって飛沫となって飛び散り、これを他の人が吸い込んで伝染することを言います。具体的には「水分を含んだ直径5マイクロメートル以上の粒子」の中にウイルスが含まれ、せき、くしゃみ、会話によって飛散するということです。目に見えるほどの唾液であれば重さですぐに落下しますが、小さくなればなるほど空中を漂い、他の人が吸い込む確率が高くなります。飛沫の到達距離は通常1〜2メートルほどですが、くしゃみのように勢いよく飛び出た場合には10メートルを超す場合もあります。

風疹は発疹が出現する前7日前から出現後14日まで鼻咽頭の分泌液中にウイルスの存在が証明されたという報告がありますが、最も感染しやすい時期は発疹出現の数日前から発疹出現後7日ごろまでであるといわれています。学校保健安全法では発疹が消失するまで出席停止になります。成人の職場でも同じ考え方が適応されると考えられます。

先天性風疹症候群の患者は、生後6カ月ぐらいまで高頻度にウイルス遺伝子が体内から検出されますので、1歳ごろまでは他人への感染に注意する必要があります。

対象者にはクーポンが配られ、無料で抗体検査、必要に応じて予防接種を受けられる。抗体価が32倍以上であれば問題はない

予防策:抗体検査とワクチン

風疹の予防は、ワクチン接種です。女子が妊娠して風疹に罹患すると先天性風疹症候群の子どもが生まれることがあるので、以前は女子にのみ予防接種をすればよいという考えで、女子中学生への定期接種が行われていました(1977年8月~1993年4月)。ところが男子が罹患すると女子へ感染する可能性がありますので、男子への予防接種も必要だと言われるようになり、1995年4月からは男女への予防接種が定期接種に組み込まれました。さらに1回の接種では抗体の獲得率がやや落ちるということから、2006年以降は麻疹・風疹混合のワクチンを1歳と小学校入学前の年の2回接種することが始まりました。1979年4月2日〜1987年10月1日生まれの男女についてはいつでも経過措置分の定期接種を受けられる制度もできましたが、情報が十分に周知されていないというのが現状であるといわれています。風疹ワクチンは生ワクチンですので、妊娠中の人は接種できません。女性の場合は予防接種後2カ月は避妊が必要です。

現在、厚生労働省ではこれまで風疹の定期接種を受ける機会がなかった1962年4月2日~1979年4月1日までの間に生まれた男性に対して、抗体検査を施行した上で、抗体がない場合に予防接種法に基づいた風疹の定期接種を行うこととなりました。対象者は市町村から送付されるクーポン券を使用して、2022年3月までに原則無料で抗体検査、および定期接種を受けられるようになります。

対策・治療:特別なものはない

風疹は1回予防接種をしていれば、90%以上に終生免疫がつくだろうとされています。なお、発症した場合の治療については特別なものはありません。周囲への感染を防ぐために、発疹出現中は外出を避けることが必要です。風疹は全数報告対象の疾患(5類感染症)のため、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出をする必要があります。

終わりに:次世代のためにも流行防止を

風疹は予防接種が唯一の予防法です。先天性風疹症候群の発生を防ぐという観点から、予防接種を確実に行うことが望まれます。

(了)