2019/09/05
アマゾンの強さの秘密は「安全」にあり
アマゾン「安全10カ条」
アマゾンの倉庫で実践される安全は、できるだけ分かりやすく、かつ実践しやすいものになっています。その基本となるのが「安全10カ条」で、過去の事故事例などを考慮して決定されてきました。運用上は12カ条になっていますが、最後の2カ条はそれぞれの倉庫でセンター長が大切だと思う2条を追加することになっています。共通の10カ条は以下の通りです。
1. 標準作業以外は行わない
2. 服装ルールを守る
3. 構内は走らない
4. 一旦停止で左右確認
5. 腰を曲げないひねらない
6. フォークリフト機械類に近づかない
7. 立ち入り禁止区域に入らない
8. 定品・定位置・定量(3定)を守る
9. 声掛け励行通ります
10. 事故・けが・故障はすぐ報告
見ていただければお分かりと思いますが、とても平易な言葉で簡潔に表現されていると思います。しかもとても当たり前のことばかりです。こんな内容ならわざわざ安全ルールと呼ばなくても常識の範囲なのではないか、と思われる方も多いかと思います。
しかし、多くの企業の作業現場では、こうした基本が守られないことで日々さまざまな問題が発生しているのです。しかもこれらのルールは、現場の作業者が意識すればそれでいいというわけではありません。マネジメントが安全な環境を維持することを最大限行ったとしても、ふとした隙に起きるのが事故なのです。
例えば3番の「構内は走らない」について考えてみましょう。よく、アマゾン以外の倉庫に訪れた際に、構内のみならず事務所も含めパタパタと走っている方をよく見かけます。倉庫は段差や障害物の「宝庫」ともいえます。もし、つまずいて転倒すれば下手をすると大けがになりかねません。それを止めさせることは大事です。でも、ポイントはそこではありません。アマゾンでは「なぜ走らないといけない状況が発生するのか」と考えます。それは、納期が間に合わない、お客様が待っているなど、など、時間に追われる業務をしているからということになります。そもそもそこを直さないといけないと考え、業務が時間通りに、走らなくてもいいような状況になるようにマネジメントサイドは対策を講じるのです。走るのは本人の問題でもありますが、マネジメントの問題、それを是正できなければ安全は確保できないというのがアマゾン流の発想です。
6番目の、「フォークリフト、機械類には近づかない」についてはどうでしょう。日本の物流現場ではフォークリフトを作業員が1メートルと離れていない状況ですれ違うような現場をよく見かけます。私はそのような現場を訪れる度にひやひやしますが、アマゾンではそもそもマネジメントサイドが現場の作業員がフォークリフトや機械に近づかなくても作業ができる現場を作らなければならないと考えます。ただ、たとえそれができていたとしても、やはり不注意で近づいてしまうことが起き得るので、安全ルールとして明文化して一般社員にも注意を呼び掛けているのです。
このように、安全ルールは作業者自身が意識する項目であると同時に、マネジメントサイドが常に安全な環境が作れているかのバロメーターになっているわけです。もしこのような行動が散見された場合には、現場マネジメントに何がしかの問題が発生しているということです。
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