編集部注:「リスク対策.com」本誌2013年1月25日号(Vol.35)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年7月19日)

東京海上日動リスクコンサルティング
上席主席研究員・気象予報士 指田朝久氏


 
 
火山の噴火は、周辺地域はもとより、遠く離れた地域でも降灰などによる被害をもたらす。さらに、飛行機などが飛べなくなることで運輸機能は低下し、国内外のサプライチェーンにも大きな影響を及ぼすことが懸念される。企業はいかにBCP(事業継続計画)を見直せばいいのか。基本となる考え方を、東京海上日動リスクコンサルティングの指田朝久氏に聞いた。


Q、噴火は、その規模や火口の位置、発生の時期などによって社会に及ぼす影響がまったく異なる。企業はいかに備えればいいか?
確かに噴火は、規模が大きかったり小さかったり、そのスケールにかなりの幅があり、影響が異なる。2011年には、霧島火山群の新燃岳で噴火があったが、この数十年間、企業活動にも大きな影響を与えたのは、雲仙普賢岳(長崎県)有珠山、(北海道)、三宅島(東京都)3つ。のこれらに共通しているのは、噴火が局所的であったことだ。

基本的に企業の事業継続戦略は、「早期復旧戦略」「代替戦略」との大きく2つに分けられるが、溶岩や火砕流、噴石の被害など直接的な被害範囲に存在する企業においては、噴火期間がよほど短くない限り、まず早期復旧戦略はあり得ない。したがって、こうした被害が及ぶエリアの中にある企業としては、代替戦略を用いて、一旦エリアの外に出て操業するか、あるいは噴火の期間は、企業としては一旦店じまいをして、じっと我慢をして、被害が完全に収まってから再開するしかない。 

例えば、有珠山の洞爺湖温泉街では、噴火をしている間は、まったく仕事ができなかったし、温泉が経営資源なので、代替場所で営業することもできなかった。三宅島は全島避難となり、その場にいることすらできなかった。これは仕方がないことだ。 

一方、代替ができる企業もある。例えば、有珠山の場合、金融機関の支店がいくつか閉鎖になったが、代替戦略として、付近の別の支店に移動して事業を続けたし、他の地域の店を借りて事業を続けた企業もある。つまり、業種と、代替ができるかどうかによって、大きく戦略が異なることになる。これは噴火に限ったことではなく、地震でも同じだ。