2016/07/18
噴火リスクにどうそなえる?
編集部注:「リスク対策.com」本誌2013年1月25日号(Vol.35)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年7月19日)
噴火の災害は多岐にわたる
噴火によって引き起こされる災害は多岐にわたる。直接的な被害では、火口から流れ出す溶岩流や、火山ガス、火山灰、さらに溶岩の破片や火山ガス、火山灰が一団となって山の斜面に流れ出す火砕流・火砕サージと呼ばれるものなどが挙げられるが、火口の場所や規模、種類、時期、継続期間などにより、災害の姿はまったく違ってくる。大きな揺れが起きて、物が倒れる、津波が襲うといった地震に比べると、非常に複雑なのが噴火リスクの特徴だ。
まず、火口の位置。噴火は山頂で起きるとは限らず、山腹の場合もある。それにより、溶岩などが流れる方向は大きく異なる。海や湖の近くなら海底噴火や、山体崩壊といって、山の一部が崩れ落ち、津波を引き起こすこともある。実際、過去には雲仙岳の噴火に伴う津波で1 万5000 人が亡くなっている。
そして噴火の規模。その種類もマグマなどが火口から飛び出してくる「マグマ噴火」と、地表近くの地下水帯にマグマが接触し、その熱によって水が水蒸気になって爆発する「水蒸気爆発」に分けられる。さらに、噴出されるマグマや火砕物の組成は火山ごとに異なり、その圧力も違うため、噴火のタイプは多岐にわたる。
噴火の時期も災害には大きく影響する。雨量の多い時期なら、土砂と水が一緒に斜面や川筋を流れ土石流を引き起こす。火山灰も、雨が降れば、コンクリートのように重くなる。ちなみに、灰といっても、物が燃えてフワフワしたものではなく、岩石やガラスを細かく砕いたものである。雪が多い時期なら高温の噴出物で融かされて、融雪泥流が発生することも考えられる。もちろん日中か夜かでも、避難体制に影響する。
もう1つが、噴火の継続時期。数時間で終わるものから数年間、数十年間続くものなどさまざま。やっかいなのは、一度噴火をしてもその継続時間や、その後の推移を簡単には予想できないことだ。
灰が降る場所によっても被害は異なる。農地なら、長期間、農作物が作れなくなるし、都市部では、わずか5mm の灰でも多くの災害を引き起こすと指摘されている。直後の火山灰には有毒なガス成分が吸着していることから、川が汚染され浄水場に入れば、その除去でも大変な被害になる。人が少ない場所でも例えばデータセンターがあればコンピューター機器が灰を吸って被災することもあり得る。そして社会機能が高度化した現在の都市部では、まだまだ想定できない様々なリスクが潜んでいる。
噴火リスクにどうそなえる?の他の記事
- 災害の種類 噴火による津波 で1万5000人が死亡
- 企業の対策① 噴火に備えたBCPの考え方 基本は代替戦略、網羅的に経営資源を見直せ
- 降灰被害 交通機関の麻痺、停電 サプライチェーンの途絶
- 噴火が引き起こす災害
- 鬼界カルデラの噴火で四国の縄文人が絶滅した
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方