助けられなかったことを後悔

また現状では、現場の消防隊員が、無線で獣医師から動物の救急救命のための指示を受けたり求めることもないため、家庭動物を火災現場内から屋外に救出できたとしても、心肺蘇生法や酸素投与を行うことができない。

瀕死の状態の家庭動物を発見後、消防指令センターなどから獣医師を手配したとしても、獣医師が現場に向かう間に家庭動物は救命処置が間に合わず、死に至り、戻らぬ命となってしまう。

さらにその惨事の一部始終に遭遇した消防士が「家庭動物を助けてあげられなかったこと」を悔やみ、また、自分が飼っているペットと感情を重ね合わせてしまい、惨事ストレスになることさえある。

火災現場から、飼い主は助けることができても、一酸化炭素中毒などで心肺停止したペットを現場で救命救急法を施して助けられないのは、人道的にいかがだろうか? 動物愛護の精神に反しないのだろうか?


Chinese firemen rescue 5 pups from fire, perform CPR on them(出典:YouTube)

平成30(2018)年度 日本全国における犬・猫 推計飼育頭数が、犬:890万3000頭、猫:964万9000頭、計1855万2000頭。飼育世帯数は、犬:715万4000世帯、猫:553万9000世帯。

平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査 結果(一般社団法人 ペットフード協会)
https://petfood.or.jp/topics/img/181225.pdf

災害時には、平常時とは明らかに異なるため、事前に火災や交通事故をはじめ、災害時における家庭動物の救急救命についてのプロトコルを作成しておき、心肺蘇生法、人工呼吸、保温、止血などを許可すべきだと思う。

そのためには、関係省庁により「通常災害(火災や交通事故など)と自然災害時における被災動物(犬および猫などの小動物)の救命救急処置に関する在り方検討会」を開催し、飼い主はもちろん、現場に居合わせた人、災害対応関係機関や団体など、全ての人々が救命救急処置を行えるような具体的な法整備と仕組みが必要だと思う。