2019/08/30
医師が語る感染症への知識のワクチン

II.ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナも手足口病と同じく、夏に主に小児の間ではやる感染症です。90パーセント以上は5歳以下の小児に発症しますが、大人もかかることがあり、大人の方が症状は強く出ることが多いと言われています。原因は主にエンテロウイルス属であるコクサッキーA群ウイルスです。
1.ヘルパンギーナの特徴
症状
2〜4日の潜伏期を経て突然高熱が出て、引き続いて咽頭痛があり、口腔内、とくに軟口蓋から口蓋弓の部分に周囲が赤く中央が水疱性の1~5ミリ程度の発疹が現れます。この小水疱はやがて破れ、痛みを伴います。疼痛(とうつう)のために哺乳や食事ができず、脱水になることがあるので注意が必要です。熱は2〜4日で下がります。高熱が出るため、解熱剤が必要なことがあります。合併症はまれですが、無菌性髄膜炎や急性心筋炎の報告があります。
感染経路
飛沫感染の他に、水疱の内容物や便から排泄されたウイルスに接触することにより、感染します(接触感染、糞口感染)。
2.予防
手洗い、咳エチケットの順守が一番の予防です。口(呼吸器)から1〜2週間、便から2〜4週間にわたってウイルスが排出されるので、よだれやおむつ替えのときにも注意が必要です。ワクチンはありません。
3.感染した場合の対策・治療
特別な治療薬はありません。口内炎の疼痛が強いときや高熱が出たときは解熱鎮痛剤を使用することもあります。口の痛みのため、飲食ができずに脱水となることがあるため、刺激のあるものは避けて、喉越しの良いものを摂取するようにします。
手足口病と同じく、ウイルスの排出は症状が治まってからも続くので、急性期のみの登校登園禁止が厳密な意味で流行の抑制にならないため、学校保健法による出席停止の扱いにはなっていません。欠席者が多くなり、授業に支障が出る場合などは、学校長が学校医と相談して第3種学校伝染病として扱いをすることもあるとされています。なお、第3種学校伝染病の出席停止については、「伝染の恐れがないと医師が認めるまで出席停止にすることもある。」ということにはなっています。
(了)
医師が語る感染症への知識のワクチンの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方