第5回 どうしたら取締役会が地政学的リスクを乗り切れるか?
貴社の計画が、新たな地政学的現実を反映するために
鈴木 英夫
慶應義塾大学経済学部卒業。民族系石油会社で、法務部門・ロンドン支店長代行・本社財務課長など(東京・ロンドン)。外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務め、危機管理広報・リスクマネジメントを担当(大阪)。現在は、GRC研究所代表・研究主幹、リスクマネジメント&コンプライアンス・コンサルタント(兵庫)。日本経営管理学会会員、危機管理システム研究学会会員。
2025/09/11
新 世界のリスクマネジメントの潮流
鈴木 英夫
慶應義塾大学経済学部卒業。民族系石油会社で、法務部門・ロンドン支店長代行・本社財務課長など(東京・ロンドン)。外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務め、危機管理広報・リスクマネジメントを担当(大阪)。現在は、GRC研究所代表・研究主幹、リスクマネジメント&コンプライアンス・コンサルタント(兵庫)。日本経営管理学会会員、危機管理システム研究学会会員。
多くの最高経営責任者(CEO)や取締役は、比較的オープンな貿易・人材・情報の流れと、概ね安定したグローバルな同盟関係を特徴とするビジネス環境で、キャリアの大半を過ごしてきた。しかし、過去5年間で国際秩序は劇的な変化を遂げ、その変化は循環的なものではなく、構造的なものへと傾斜しつつある。リスク環境はかつてないほどグローバル化し、相互に関連し、急速に変化している。そのため、こうしたリスクを管理・軽減し、競争優位性を確保するための機会を早く見つけ出すことが重要になっている。
EYボード・マターズ・センターは、EYパルテノン・ジオストラテジック・ビジネス・グループと共同で、「より複雑で断片化が進み、不確実性が高まる国際的なビジネス環境において、取締役会がどのように監督活動を調整しているか」を調査した。取締役会が地政学的リスクと機会に対処する方法は、ここ数年で劇的に変化した。例えば、EYパルテノンの「地政学的戦略の実践」調査によると、2025年には84%の組織が、「取締役会は政治リスクが企業の既存戦略に与える影響を評価している」と回答したが、2021年にはその割合は40%に過ぎなかった。
調査結果は、取締役が検討すべき3つの点を浮き彫りにしている。
1. 取締役会は、世界的なマクロ経済・貿易・規制・政策課題への対応を支援するために十分な情報を入手しているか?
2021年から2024年にかけての最大の変化は、「取締役会が外部の専門家から政治リスクに関するブリーフィングを定期的に受けている」と回答した割合が、2021年のわずか16%から2025年には82%に急増したことである。また、経営陣からこれらのトピックに関するブリーフィングを定期的に受けている取締役会の割合も大幅に増加している。
しかし、取締役は、受け取る地政学情報の量や頻度だけでなく、その質にも注意を払うべきだ。優れた取締役会は、取締役会議事の形式と内容が取締役会における建設的な対話を促進することに向けられている必要がある。そしてその報告書は、焦点を絞った将来を見据えた内容であるべきであり、同時に、傾向・パターン・意味合い・ビジネスへの影響に関する分析を盛り込み、要約・吹き出し・グラフ・音声・動画といった分かりやすい形式を用いるべきである。
取締役会メンバーが情報をどのように活用するかも重要だ。取締役は、取締役会の質を向上させるための最優先事項は「経営陣のプレゼンテーションを聞く時間を減らし、オープンな議論に多くの時間を費やすことだ」と繰り返し述べている。取締役会メンバーが戦略や長期的な価値創造への影響について議論する機会がなければ、優れた洞察や分析も役に立たない。
新 世界のリスクマネジメントの潮流の他の記事
おすすめ記事
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/15
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方