2016/07/25
誌面情報 vol56
同社では、平成11年の大型台風の被害を教訓に災害対応マニュアルの整備を行い、以来、毎年のように発生する台風のたびに内容を見直してきた。「お客様の被害をいち早く支援することが我々の使命。そのことを全社員が理解している」と小山社長は語る。
社員・パートで120人程の中小企業だが顧客は5000軒にのぼる。台風では、これまでに最も多くの被害が出たのが平成11年台風18号で約1000軒だったが、今回ははるかに上回る約3000軒の修理・安全点検の要請に対応することになった。
前震が起きた翌早朝、小山社長は台風用に整備していた風水害対応マニュアルを地震用に作り替えることを指示。特にブルーシートがけに関しては台風被害の対応手順と大きく変わるため、「余震が収まるまで屋根に上らない」など、社員の安全確保を最優先することを呼び掛けたという。
さらに、建築知識が少ない女性の社員でも、顧客からの要請に応じられるよう電話対応マニュアルと、被害状況の聞き取りチェックシートを整備。これらも台風用に用意していたものを応用した。
チェックシートでは、対応の優先度が可視化できるよう、被害状況をSは(築19年以上の瓦被害でひどいもの)、A(ライフライン、防犯上の問題が出ているもの)、B(その他の急ぎのもの)、C(生活に支障がない程度の被害)、その他(点検希望のみ)とレベル分けした。「ドクターのトリアージ(治療の優先度を決定して選別を行うこと)と同じ感覚です」と小山社長は語る。
余震や雨の中、一部の顧客からは直ぐにブルーシートをかけてほしいといった要請も寄せられたが、社長自らも顧客に納得してもらえるよう電話応対にあたった。「社員の命はお金には代えられない。危険な目にあわせるわけにはいきません」(小山社長)。
誌面情報 vol56の他の記事
おすすめ記事
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17
-
-
-
-
-
社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置リスクオーナー制の導入で責任を明確化
阪急阪神ホールディングス(大阪府大阪市、嶋田泰夫代表取締役社長)は2024年4月1日、リスクマネジメント推進室を設置した。関西を中心に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開する同社のグループ企業は100社以上。コーポレートガバナンス強化の流れを受け、責任を持ってステークホルダーに応えるため、グループ横断的なリスクマネジメントを目指している。
2025/11/13
-
リスクマネジメント体制の再構築で企業価値向上経営戦略との一体化を図る
企業を取り巻くリスクが多様化する中、企業価値を守るだけではなく、高められるリスクマネジメントが求められている。ニッスイ(東京都港区、田中輝代表取締役社長執行役員)は従来の枠組みを刷新し、リスクマネジメントと経営戦略を一体化。リスクを成長の機会としてもとらえ、社会や環境の変化に備えている。
2025/11/12
-
入国審査で10時間の取り調べスマホは丸裸で不審な動き
ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく4年。ウクライナはなんとか持ちこたえてはいるが、ロシアの占領地域はじわじわ拡大している。EUや米国、日本は制裁の追加を続けるが停戦の可能性は皆無。プーチン大統領の心境が様変わりする兆候は見られない。ロシアを中心とする旧ソ連諸国の経済と政治情勢を専門とする北海道大学教授の服部倫卓氏は、9月に現地視察のため開戦後はじめてロシアを訪れた。そして6年ぶりのロシアで想定外の取り調べを受けた。長時間に及んだ入国審査とロシア国内の様子について聞いた。
2025/11/11
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/11
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方