2016/09/28
誌面情報 vol56
③企業に関する都市伝説「商業伝説」
いま1つ企業経営に影響を与える風評としてあげられるのは都市伝説です。企業の都市伝説は「商業伝説」と言います。「マクドナルドのハンバーガーは、ミミズを使っている」「ケンタッキーのフライドチキンは、四つ足の鳥を使っている」など、皆さん聞いたことがあると思います。権威のある大企業のうわさほど広まりやすいと言われています。こういったものが商業伝説です。根も葉もない全く関係ないうわさがよく出てきますが、特に対策を取る必要もないものです。
④風評被害
これまで説明したように本来、風評被害とよぶべきでないものまで含め、あらゆる分野で「風評被害」という言葉が使われています。では、風評被害とはどういうものなのでしょうか。まず、風評被害のメカニズムを風評被害の元来の意味から説明したいと思います。
安全にかかわる社会問題や事件、事故、環境汚染、災害、不況が報道されて、本来、安全とされる食品や商品、土地、企業を人々が危険視して消費や観光をやめることによって引き起こされる被害、これが風評被害です。ポイントの1つ目は「安全」です。本当は安全なのに危険だと誤解されて生じる被害です。ですから、環境汚染で危険性のある商品を人々が買わないことを、風評被害とは言いません。これは風評ではなく環境汚染そのものだからです。危ない企業、潰れそうな企業の株を買わない、取引しないというのは、その企業に勤める人にとっては風評かもしれませんが、事実として業績が悪くなっているのならば、風評ではないわけです。
2つ目のポイントは観光、農業、漁業などにダメージを与える「経済的被害」という点です。今では、精神的被害や炎上など色々なことを対象に風評被害という言葉を使いますが、風評被害とは経済的被害を問題としたものでした。日本で発端となったのは広島・長崎の原爆被害に続く「第三の被爆」といわれた1954 年の第五福龍丸の被爆事件です。歴史的に、日本では原子力が関連する事故において風評被害が問題となってきました。
東日本大震災以前は原子力発電所がトラブルを起こしても、大量の放射性物質の漏洩はありませんでした。しかし、ひとたび事故が起こると、みんな怖がって魚や野菜を買わなくなる。皆さんもご承知のように放射性物質は検査で測れます。だからトラブルや事故が発生したとしても「放射性物質は出てない、安全です」とはっきり言うことができます。ただ安全であったとしても――、「風評に過ぎない」ものであっても――、流通が滞ったり、人々が商品を買ってくれなくなれば、経済的被害は発生するのです。これが風評被害です。
実は、風評被害の「風評」は風評に過ぎないという意味でうわさは全く関係ありません。風評被害はうわさと全く違う現象なのです。東日本大震災の福島第一原子力発電所をきっかけに風評被害が問題になっていますが、危険だといううわさ、ネットの書き込みを根絶させても問題は解決しません。震災後の流通構造の変化の問題ですから当然です。それよりもきちんと現状の汚染状況、食品の安全性について理解する人が増え、商品などを購入してもらえるようになり、商品が適性に流通されることが重要です。うわさはあまり関係ありません。
誌面情報 vol56の他の記事
- 組織の風評被害対策アンケート
- 企業の魅力度が風評に影響する
- 不祥事対応における風評発生メカニズム
- 被害のパターンを見極めることが大切
- 風評マネジメントで観光を立て直す
おすすめ記事
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/07/28
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-
-
-
-
-







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方