2016/09/28
誌面情報 vol56
②「炎上」「集合行動」「デモ」
2000 年前後から、ネット上で色々と企業や有名人にとって不利なことを書かれることも「風評」の一種とされるようになりました。この手のネット上の問題で初期の有名なケースは1999年の「東芝クレーマー事件」です。あるユーザーが東芝のビデオデッキの修理依頼をしたところ、東芝側がクレーマーとして扱い、適切な対応をとらなかったことがきっかけになったとされる事例です。修理の依頼者はお客様相談センターの回答を録音していて、それをネット上に上げました。これが2チャンネルなどで爆発的に拡散して、最後は副社長が謝罪するという事態になりました。企業がネット上の問題に気を使うようになったのはこの事件以降になります。
2000 年代後半からソーシャルメディアが広まるにしたがって、ネットやソーシャルメディア上の炎上と、それに伴う人の動きも風評リスクの一環として捉えられることが多くなりました。2010 年前後からは世界的にもソーシャルメディアと人の集合行動、人が集まって行うデモが結びつくようになりました。例えば、当時の政権を倒したチェニジアのジャスミン革命があります。エジプトでも革命が起こりましたし、2011年には米国でオキュパイ・ウォールストリートと叫んだ格差の是正運動も起きました。これらの社会運動はFacebook やTwitterを使って広まっていきました。
反原発運動や安保法制反対運動もこの流れの中にあるといえます。ソーシャルメディアと人の集合行動が結びつき、炎上や風評リスクと絡めて議論されるようになってきているのです。
忘れられている方も多いですが、2011 年の夏にフジテレビに対する抗議行動が盛んに行われました。韓流ドラマを多く放映する偏ったメディアとされデモが行われました。韓国に対するヘイトスピーチの走りとも言えるかもしれません。そのフジテレビの最も大きなスポンサーである花王も叩かれました。しかし、こ
れらには特別な理由はありません。
フジテレビや花王も本質的に企業の姿勢や活動と全然関係ない点をネット上で叩かれる、それがデモにつながる、といった問題が発生していったのです。大企業はマスゴミ、ブラック企業などとされ、叩かれやすい傾向にあります。都市伝説の一種である「商業伝説」も大企業でうわさがたちやすいという傾向があります。誰もが知っている企業であれば、話題にしやすいし、批判しやすいのです。ただ、花王がずっと叩かれているかというと、そうではありませんし、フジテレビがずっと叩かれ続けているわけでもありません。ネット上の炎上だけの「風評に過ぎない」問題なら収まります。
翻って繰り返しますが、先ほど言いましたように食品の問題や食の安全、本質的な人の安全に関わる問題はすっと尾を引きます。つまり、重要なことは「風評被害」「風評リスク」だから何をどうこうするかということを考える前に、本当に風評そのものが問題なのか、企業の対応そのものが問題なのか、見極めること
がもっとも重要なのです。
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