2016/08/05
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
2つめは重心を高い位置に持ってくること
次に2つめの理由。それは、重心を高い位置に持ってこれるということです。
登山の世界では、ザックに荷物を詰める際の定石として、「重たいものは上に入れる」というものがあります。寝袋は下に、テントは上にってかんじです。最近、アウトドアグッズはなんでも軽量化されているので、あまり厳密に実践されなくなってきてはいるのですが、それでも効果は絶大です。
理由はこうです。
まず、人の重心はだいたいおへその裏側あたりにあります。
持ちたい荷物の重心が、自分の重心の真上になるように持てば、普通に立っているのと同じように、骨格だけで荷物を支えることができます。それには、少し前かがみになる必要がありますが、荷物の重心が高いほど、前かがみの量が少なくて済みます。
荷物の重心が低くなるほど、前かがみの量を大きくする必要がありますが、あまり極端に前かがみになってしまったら、かえって歩きにくくなりますよね?
だから、歩きやすい範囲でしか、前かがみにはなれません。そうすると、荷物の重心と自分の重心が合わせ切れない分を、腹筋や背筋で支えなければならなくなります。

左図だと、aの角度だけ前傾すれば、荷物の重心が真上にきます。そうすると、骨格でささえるだけで荷物を持つことができます。でも、右図のように、重心が下にくると、bの角度まで前傾して初めて重心が揃えられることになります。でも、そこまで前傾して歩くのは非現実的。そのため、筋肉で重さをささえなければならなくなるので、重く感じてしまうし、早く疲れてしまうのです。
ところで、理屈はともあれ、感覚的に重心が上のほうが軽いものなのですが、みなさんの感覚は鈍くなっていませんか?
頭の上に荷物を乗せて運ぶという民族は世界各地にあって、日本でも以前はよくあったようです。これは理にかなっているということですよね。
でも、最近は、中学生、高校生が腰より低い位置でリュックを持っていますよね。重心は低くて揺れています。彼らは鍛錬しているのかな?(笑)電車に乗って移動しているので、重さを感じない?筋肉がある時期だから大丈夫?
中高生も、災害時は、素早い避難のためにはストラップを短くすべしとお子さんに伝えてあげてください!
中高生だけではありません。園児たちの遠足!なんだかぶらぶら揺れる水筒を持っているのをよく見かけます。最近は特に、熱中症対策で昔よりも大きい水筒を持っています。園児の体重に対して、水筒の質量に加速度がかかるのです。それで山を登ろうものなら、足元がおぼつかなくなるのは当然で、園児が鍛錬するにはすこし、過酷かも・・。もしかすると私たち、園時代から鍛錬しているから、重さを感じなくなっている・・???
言ってみれば、赤ちゃん時代から重かったのです。近いうちに 赤ちゃんやこどもを軽くだっこ&おんぶする方法も詳しくご紹介しますが、揺れない、重心が高い昔ながらのおんぶを実施してもらうと、保護者の方が、一番驚かれます。同じ体重なのに、こんなに軽くなるんだって。
現代人は我慢しすぎ?逆に昔の人はどうすれば軽いか、よくわかっていたんだなあと思います。
おんぶもしかり。本を読みながら・・が注目されがちな二宮金次郎像。あの像の薪の位置にも注目してみてください!古い時代につくられたものは、だいたい薪は、おへそより上にありますから!

自分も背負ったことがある人が像を作ったからそうなったのではと推測しているのですが、時には、上部の方が薪の本数が多いものもあります。それだと、重心がさらに上だから、もっと軽いですよね。
でも、時代が新しくなると、その位置では重いし歩けないのでは?という像もあります。歩きスマホを助長するとかで、だいぶ像は減っているそうですが、みつけたら薪の位置を観察してみてください♪
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方