2016/10/04
誌面情報 vol57
警備会社とCBRN
CBRNテロ対処は、消防や警察、自衛隊だけで対処できるものではない。全体の警備の枠組みの中でそれに調和させた形で考えることは言うまでもない。そして、HVEの警備を考える上で不可欠なのが警備会社と警備員である。
一般に、警備会社にはCBRN防護の知見も装備もないのが現状である。しかし、そのことに問題意識を持ち、オリンピックまでに対策を講じようという動きは我が国でも出てきている。
例えば、警備大手のS社では、CBRN専門家を招いて研究所と本社の両方で関係者の勉強を開始している。実際に、テロの際に現場に一番近いのは警備員である可能性が高い。
これは、地下鉄サリン事件の際の地下鉄駅員に立場が近い。したがって、自らの命を守るためにも、乗客(観客)の命を守るためにも、最小限の知見と行動、手順は知っておく必要がある。これは、NFPAで言えばAwareness Levelと呼ばれるものであろう。
さらに、警備会社の幹部も主要会議のメンバーとして当初の段階から参画しておくことも重要であろう。CBRN関連の会議も含めてである。必要に応じて、交通・輸送やホテル、スタジアム職員、施設管理者、救急医療や周辺病院、ボランティア等もメンバーとして考えておくべきかもしれない。CBRNテロの際の観客避難まで視野に入れる時に、このことは考慮要因となる。
装備・器材、医薬品、ワクチンまで
最後に我が国の国内に、CB検知器の本格的な製造企業はないことに言及したい。このことは、オリンピックのような大規模イベントの準備を考える上で留意されるべきである。
福島第一原発事故の際を思い出すまでもなく、何か突発的な事態となれば(例えば、欧州の大都市で2020オリンピック直前に大規模なCテロがあったような場合)、緊急に化学剤検知器を(大量に)調達しようとしても、各メーカーに在庫はない。製造も追いつかないし、世界市場の中で日本が優先されることはない。これは、福島の後の線量率計、線量計の需給ひっ迫の状況に似たものになるだろう(Rの場合には、国内にまだA社とF社があるのでまだましであるが…)。
CB検知器の場合には(特にIMSのような放射線源を使ったC検知器)、輸入手続きの問題も出てくる。もちろん、輸出許可が必要なものもある。アマゾンで商品を注文するような感覚で、翌日には届くだろうといったものではない。数か月、時には1年以上を見ておくべきかもしれない。
さらに厄介なのは、炭疽菌のようなB(生物)テロの場合である。ワクチンを緊急輸入しようにも、売ってくれるかどうか保証はない。また、そのストックが残っているかどうかも定かでない。米国のような同盟国でも、自国の所要を考えて国益に照らして拒否されることもあるだろう。緊要な医薬品も同様である。
Bの脅威が高まった時(あるいは、イベントに万全を期す必要性が確認された際)には、ある程度の計画的な備蓄も考慮されるべきであろう。
おわりに
思いつくままに、オリンピックのようなHVEにおけるCBRN対策について述べてきたが、多機関連携、Hoaxes(偽物)への対応、警備会社等、どのポイントを見ても、これから詰めていく課題が見えてくると思う。
特に、これらを踏まえてCBRNを含む警備計画を策定していくには、その深さと幅を考慮しておくべきであろう。本番までに状況は変わるし、本番では何が起こるかわからない。
(了)
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