2019/11/25
防災・危機管理ニュース

東京メトロは25日、「異常時総合想定訓練」を東京都江東区の総合研修訓練センターで実施した。訓練対応の社員65人、乗客役の社員100人以外に乗客役のモニター40人、警視庁から5人、東京消防庁から20人の計230人が参加。東京オリンピック・パラリンピックを来年に控え、大規模スポーツイベント中の爆破テロを想定した訓練を実施した。
今回の想定はスポーツイベントの開催期間中に、新橋駅を渋谷方面へ発車直後の銀座線車内で不審物が爆発したという設定で行われた。午後2時20分に訓練が開始され、煙や爆発音が起こり、緊急停止を実施。午後4時30分の運転再開を目指すと宣言された。総合指令所の他、消防や警察にも通報が行われ、現地対策本部を設置。ホーム上の避難誘導や、車内の乗客への案内はiPhone向けの多言語対応アプリが使われ、日本語以外に英語、中国語、韓国語でもアナウンス。駅構内での対応にも多言語音声翻訳機の「メガホンヤク」が使われた。

新橋駅を出た直後の設定であり、閉まっているホームドアと車両のドアがずれている状態で初めて救助訓練を実施した。急がれる重傷者の救出は、担架を車両側からホームドアの上を通してホーム側へ受け渡しする形式で行われた。それ以外の乗客は虎ノ門駅側の最前方や新橋駅側の最後方の非常扉やホームにかかっていないドアからはしごで脱出。車いす利用者や視覚障がい者の避難には線路上を走らせることができる搬送用トロッコが使用された。搬送用トロッコは各駅に設置しているという。

目標運転再開時間前の午後4時10分ごろに訓練は終了した。訓練後、東京メトロの安全・技術部次長の木暮敏昭氏は「例年は自然災害を想定した訓練が多いが、来年のオリンピック・パラリンピックを控え、外国人客も多く見込まれる中、さまざまなツールを使った事件・事故対応を行った」と意図を説明。銀座線新橋駅を想定したのは「(外苑前駅が最寄り駅となる)新国立競技場へ向かう利用者が多いと判断したため」と述べた。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
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