中国では2017年に中国共産党第19回全国代表など大きな選挙が立て続けに行われるため、体制に大きな変化が生じる可能性が高い

近年における世界情勢は、政治、経済、社会、全ての面で流動化しています。2017年に顕在化するであろう10のリスクを、以下の通り予測しました。前回に引き続き、一つずつ解説を行います。

【2017年グローバルリスク予測】

1.    グローバリゼーションの更なる進展と世界的な社会的不安の拡大
2.    欧州諸国における右傾化傾向の高まり
3.    国際機関の更なる機能低下
4.    中国情勢の不安定化
5.    朝鮮半島情勢の緊張化
6.    中東情勢の不透明化
(シリア・イラク・トルコ・サウジアラビア・イラン等)
7.    米国の国際的なプレゼンスの低下
8.    ロシアの孤立化
9.    Homegrown Terrorist/Lone Wolf Terroristによるテロの増大
10.    自然災害の増加・新たな感染症の発生


【予測されるリスク】
・4つの基本原則(社会主義の道・人民民主独裁・共産党の指導・マルクスレーニン主義・毛沢東思想の堅持等)の継続性への懸念
・一般市民等の不満の更なるうっ積等により急激に変化する可能性の増大 等

【背景等】
現状の中国のジニ係数は0.469となっており、0.4を大きく超える水準に達しています。中国は言わずと知れた社会主義国家であり、4つの基本原則(社会主義の道・人民民主独裁・共産党の指導・マルクスレーニン主義・毛沢東思想の堅持等)を堅持する政治体制となっていますが、一方で、非常に大きな格差が存在するという政治的・社会的矛盾を抱えています。

また、政治体制が多層化しており、更に、共産党組織も多層化しているため、政治的腐敗が発生しやすいとされています。そのため、一般市民等の不満が増大しており、年間20万件以上発生する一般市民による暴動の最大の要因となっています。

一方、政府・共産党も2014年以降、汚職撲滅キャンペーンを推進していますが、反面、共産党内・軍部内での不満も増大しているともされています。さらに、近年における香港での反中国的な姿勢の拡大、2016年5月には台湾で対中国独立志向の強い蔡英文氏が総統に就任する等、内部にも問題を抱えている状況です。

経済状況も芳しくなく、2015年以降の経済成長率は6%台に低下しており、経済構造も総資本形成(設備投資・公共投資・住宅投資等)、つまり投資がGDPの42.2%を占める状況も改善されていません(経済状況にかかわらず投資計画が実行されることが多く、余剰投資、余剰設備、余剰在庫等を助長しているとされている)。

そのため、政府・共産党としては、軍事力を背景とした積極的な外交姿勢を展開していますが、近隣諸国との緊張が拡大する傾向となっています。領土問題では、日本との尖閣諸島問題の他、西沙諸島(パラセル諸島)問題、南沙諸島(スプラトリー諸島)問題、インドとの国境問題等、多くの国境紛争を抱えており、解決の方向性は不透明です。

一方、中国においては、インターネットを含めたメディアの監視・検閲体制が厳格に行われていますが、それも限界に来ているとの指摘も多く、2017年3月には、香港行政長官選挙、秋には中国共産党第19回全国代表大会が行われ、今後の共産党執行部の人事も明確化するとされており、2017年に大きな変化が生じる可能性も高いと言えます。

(了)