2017/02/08
講演録
サイバー攻撃の予防と対応策/未然防止とCSIRTなどについて
世界最速解析の秘密計算
サイバーセキュリティの世界は人材が少なく、育てようとしても教える人がおらず教育が追いつかない。このため、当社でも有望な人材のスカウトを積極的に進めている。秘密計算はデータを暗号化したまま複数のデータベースに分散して保存し、復号せずに暗号化したまま統計解析できる技術であり、特に注力している。1つのデータベースが盗まれても解読は不可能で安全だ。しかも世界最速の統計解析速度を誇る。今はゲノム解析に主に使われている。匿名化は2017年5月から個人情報保護法が改正され、扱いやすくなるため需要は増えるだろう。各種匿名化についてはコンテストも行われ、当社も優秀な成績を収めている。
サイバー攻撃については、アクセスしてはだめなサイトのアドレスを独自の技術でブラックリスト化している。市販のソフトからの情報だけでは足りず、情報を米国等の大学等とも提携して集めている。サイバー攻撃はメールやUSBなどあらゆるルートからやってくる。ログ分析、不正ログイン検知、DDoS、Slow DoS対策等も行っている。また、セキュリティオーケストレーションという技術も検討している。ログ情報を分析することで攻撃を検知し、オペレーションセンターからコントローラーに制御指示を自動的に出して最適なポイントで攻撃を遮断し、クリーニングセンターで制御する。
NTT CERTでは様々なサイバーセキュリティに関する対応をNTTグループ向けに行っている。このNTT-CERTは発足から12年目で、日本でも最も古い部類のCSIRTである。高度のセキュリティ診断や分析も行っている。
縦割りをなくし総合型の危機対応を
これまで説明してきたように、東京2020大会に向けて、重要インフラがサイバー攻撃のリスクにさらされている。現状では、当社でも自然災害は災害対策本部、情報システムはSOC・CSIRTと対応は縦割りになりがちだ。縦割りのまま、なんとか自然災害などの危機対応を行い、今に至っているのが多くの日本企業の姿だ。まだ日本はサイバー攻撃で人命が失われるほどの大きな被害を受けたことがないということもあろう。しかしこれからは現状のような、バラバラの対応ではだめで、組織・分野を統合した危機対応のマネジメントが必要だ。
東京2020大会では政府を始めとして、多くの様々な組織がかかわる。サイバーからリアルな事象に至る複合的な危機が発生した場合、単一組織での解決は困難だ。リオオリンピックでは大きな問題は発生しなかったが、東京2020大会では万全の体制を構築しておく必要がある。
リスクマネジメントをする組織は基本的に一つで良いはずである。「総合リスクマネジメント」として、サイバーだけでなくリアル・フィジカルも含めた異なる組織・分野間における共通プロセスSOP(共通の運用手順)を作る。そこをどうICTでカバーするか。当社では「KADAN」という経営層、管理層に対して危機対応マネジメントを支援するツールの開発を進めている。これからは現場支援というより、経営層と管理層の危機対応に対する考えに変革を促すことに重きを置いてやっていきたい。
(了)
- keyword
- TIEMS
- サイバー攻撃
- サイバーセキュリティ
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方