大丸有地区の防災力向上を目指し技術的な可能性を議論するサロン

東京・千代田区の中心業務地区の防災性能を高めようと、産・官・学の有志が2月5日、大手町の三菱地所会議室で「大丸有防災テックサロン」を開催した。

東京大学加藤孝明研究室と大丸有まちづくり協議会が呼びかけたもの。国土交通省、東京大学のほか情報通信や不動産開発、都市計画、警備などの産業分野から約30人が参加した。

大手町・丸の内・有楽町を対象とする大丸有地区は、国の「都市再生安全確保計画」に位置付けられている。オフィスや商業施設などの都市機能が高密度に集積し多くの就業人口を抱える半面、緊急時には災害対策本部を核としたトップダウンの防災体制を取りにくい。

呼びかけ人の加藤孝明教授は「緊急時、地区内の関係者や滞留者が自律的、主体的に動ける体制づくりが重要」と指摘。これを推進するには災害への備えを日常使いのなかに埋め込んで街の価値を高める取り組みが必要と説き、キーワードとして「防災【も】まちづくり」をあげた。

現状では非常事態の際に街の利用者が何を求めるのかを把握し切れず「企業側も適切な技術提案ができない」ことから、サロンを定期的に開催して街側のニーズの洗い出すとともに企業プレゼンを実施。両者のマッチングを図りながら、新たな防災技術・システムの開発、実装の可能性を探る。

同地区内では昨年、産・官・学が連携して社会課題の解決を目指す「Tokyo Marunouchi Innovation Platform(TMIP)」が発足。大企業とベンチャー企業、大学などが組んでオープンイノベーションの創出を図る取り組みも始まっている。こうした組織ともゆるやかに連携しながら議論を深める考えだ。

当日、参加者から「議論の結果どのようなゴールを目指すのか」という質問が出たのに対し、加藤教授は「大丸有地区の重大な被害は、混乱の先にこそある。それは日本に対する信頼の失墜だ」と指摘。目指す姿について「災害時に大きな混乱を生じさせず『東京は大丈夫』と海外に示すこと。滞留者が何日か地区内で過ごしても『被害にあったのが大丸有でよかった』と思える状態をつくること」と話した。

(リスク対策.com)