当面1カ月は中国国内の動きを避けるべき

Q9 海外の人と日常的に接触するビジネスやサービスも多数存在します。企業としてはどう対策をとればよいですか?

まず従業員の海外派遣ですが、中国国内の動きは避けたほうがよいと思います。どのくらいの期間かは難しいところですが、向こう1カ月はできるだけ出張を控えたほうがよい。また中国の駐在員も動き回らないほうがよいでしょう。

なぜかというと、いまは事態が急激に変化しています。湖北省以外の感染者がどう増えるかわからず、中国国内の社会不安が増幅してくるおそれもある。飛行機がいつ止められるかわかりませんし、暴動が起きる可能性も否定できません。

ただ、中国からの駐在員の退避は、湖北省以外の都市で死亡者が増えくれば話は別ですが、いまの状況では、必要ないと思います。

新型ウイルス肺炎が世界に拡大 武漢市を封鎖(写真:Featurechina/アフロ)

あとは中国から帰って来られた方への対応ですね。湖北省からの帰国者は検疫からの指示に従ってください。それ以外の中国から帰国者は、自宅待機にすることはないけれど、2週間は毎朝晩検温し、熱があるようなら早めに保健所などへ連絡し受診いただく。そしてマスクが手に入れば、人ごみの中に入るときはつけてもらう。それくらいの注意で、2週間は自主的な健康管理をしていただけばよいでしょう。

Q10 旅行客と常に接するサービス業や観光業はどうすればよいですか?

観光業など感染リスクの高い業種はとくに注意が必要(写真:写真AC)

そうした業種の方々がほかの人より感染リスクが高いのは確実で、もちろん、注意していただく必要があります。しかしビジネスを停止するわけにはいかないでしょうから、たとえば観光ツアーであれば、スタート前に「体調の悪い人はいませんか?」と尋ね、もしいれば申し出てもらうような対応が必要だと思います。

観光客の方々にマスクをしてもらうのは難しいかもしれませんが「手洗いをよくしてください」と呼びかける分には問題ないでしょう。スタッフの方々が手洗いやうがいを励行することはいうまでもありません。

接客スタッフがマスクをする・しないも、一概にはいえませんが、高齢者や慢性疾患を持っている方は、したほうがよいと思います。こうした状況ですから、事前にきちんと理由を説明してから着用すれば問題ないでしょう。

 

プロフィール
濱田篤郎(はまだ・あつお)
1981年東京慈恵会医科大学医学部卒業。84年米国Case Western Reserve大学に留学し熱帯感染症、渡航医学を習得。帰国後、東京慈恵会医科大学・熱帯医学教室講師を経て2004年から海外勤務健康管理センターのセンター長に。10年から東京医科大学教授、東京医科大学病院渡航者医療センター部長に就き、海外の勤務者や旅行者の診療にあたっている。

(リスク対策.com 竹内美樹)