■中国は貿易総額35兆円、在留邦人12万人

日本の年間総貿易額の21%が対中国貿易。経済への影響は大きい(写真:写真AC)

外務省が公開している統計によれば、2018年度の日中間貿易総額は35兆円にのぼり、在留邦人は12万人であることが分かっています。

日本の年間総貿易額のざっと21%が対中国貿易であり、当然のごとく1位。米国のそれの約1.9倍もの金額となり、日本経済の屋台骨と言っても過言ではないでしょう。

しかし、そんなに重要な中国との経済関係であるならば、今回のウイルス騒動でこんなに混乱していてよいのでしょうか? 絶対によくありません。今回のウイルス騒動はいつか必ず収束することに間違いはありませんが、これによる経済的影響は計り知れないものがあることでしょう。

「今回のような出来事は不可抗力であり、避けようがないではないか」という声も聞こえてきそうですが、ビジネスを行う観点で言うならば、だからといって生産がストップしたり、工場が潰れてしまったりしてよいわけはありません。少なくとも、そこで働く労働者や日本から派遣されている駐在員の健康や生活には責任を負うことが企業の使命だと思います。

ちょうど17年前、筆者が中国に初めて入国した年、SARSウイルスが発生し中国で猛威を振るいました。当時は今のように情報網が発達していないことから、まったく未知のウイルスが中国で蔓延しているという情報だけがなんとなく口づてで広まり、上海にいてもマスクを強制されるようなことはありませんでした。

新たな次元の中国ビジネスリスク対応が必要となっている(写真:写真AC)

しかし、情報化が大きく発展した現在は状況が異なります。現地からの情報が映像でも文字でも、またWechatのようなSNSでも、一瞬のうちに拡散してしまいます。つまり、中国政府がいくら統制しても、拡散することを抑えることは不可能です。だから現地に住む我々にとって必要なことは「賢明なる情報の取捨選択」なのです。

まとめるならば、今回の騒動で明確になったことがあります。それは、今後中国でビジネスを続けようとするならば、言語能力と日進月歩のIT技術に対する耐性の2点が絶対必須条件となったということです。

いまだ収束を見ないウイルス騒動ですが、今後は「中国ビジネスが新しい次元に突入していること」そして「新たな次元の中国ビジネスリスク対応が必要となったこと」を企業の幹部陣が肝に銘じる必要があると感じております。